髙野良英

対人恐怖と不潔恐怖
日本文化と心理的性差の基底にあるもの

四六判210頁 定価(本体2,400円+税) 2009年8月刊


ISBN978-4-7724-1081-6

 本書は,第一章「演技と対人恐怖症と日本文化」,第二章「対人恐怖・自己漏洩症状 対 不潔恐怖・他人密入症状」,第三章「男女の性格傾向について」を通じて,日本文化論的アプローチを交えながら対人恐怖と不潔恐怖を分析する。
 本書の第一の特異性は,対人恐怖と不潔恐怖を対概念とする見方を実践に援用する試みにある。次いで第二の特異性は,対人恐怖と演技意識,精神療法と演技意識の問題設定にあり,これらの論点は伝統的日本文化への言及によって淀みなく論述に溶けこんでいる。さらに第三の特異性は,今後ますます重要となる現代社会文化の問題,および国際比較文化論の考察にある。そして第四の特異性は,男女を対概念としてとらえる「男女の心理学」にあり,ここでは「心理的最適距離」という便利な概念ツールが展開される。
 本書は,東京家庭裁判所,聖路加国際病院,NTT中央健康管理センター神経科で精神科外来診療に従事し,精神医学界の三巨人,土居健郎,安永浩,飯田真に師事した著者が,対概念としての「対人恐怖と不潔恐怖」という二つの症状について,精神医学とその周縁領域を横断しながら考察した,稀に見る珠玉の論考である。

おもな目次

    第一章 演技と対人恐怖症と日本文化

      対人恐怖症例とその検討
      対人恐怖症者の矛盾
      対人恐怖症と日本人と演技
      日本的演技の特徴
      暗黙の約束
      日本文化における対人恐怖的演技
      演技的世界の問題点
      「甘え」私見
      表と裏と演技
      精神療法における日本的演技
      演劇から精神疾患を見れば

    第二章 対人恐怖・自己漏洩症状 対 不潔恐怖・他人密入症状

      対人恐怖症のスペクトルと自己漏洩症状
      不潔恐怖症
      不潔恐怖症者の忌避する対象
      他人密入症状の典型例
      五症例の診断と理解について
      他人密入症状の非定型例1 家の中に侵入してきた形跡のない例
      他人密入症状の非定型例2 分裂病と診断できる例
      不潔恐怖症と他人密入症との共通性
      対人恐怖症者の世界における他者
      日本文化の不潔恐怖症的性格
      不潔恐怖症者の世界における他者
      対人恐怖症と不潔恐怖症の対極性
      中心分裂病と対称的症状系列
      対人恐怖・自己漏洩症状 対 不潔恐怖・他人密入症状
      両症状と男女の心理との関係
      対人的心理的距離

    第三章 男女の性格傾向について

      アダムとエヴァ
      心理的最適距離の性差
      私情(個人)優先と公共(客観)優先
      最適距離と心理的姿勢の方向
      心理的姿勢におけるずれ
      男女の性格傾向と社会的圧力
      心理的性差理論の問題点
      女性の心理的最適距離についての一仮説
      妊娠恐怖からみた精神症状
      精神科外来の窓から見えた社会情景