おわりにかえて

 日常的な臨床実践の現場に25年以上浸かった上で,「後進の指導」という目的のために赴任した大学で学生指導をはじめて実感したのは,「援助行為を行う立場ごとにその専門性が大きく異なる」という現実を教えることの難しさであった。社会的な現実を知らない学生は,それでも「自分は有能だ」との過信(?)に満ちた態度に見えたからである。現場で叩き上げられてきたからこその感覚かもしれないが,社会的援助組織の多様性とともに,それぞれの専門性が対人援助という文脈において,いかに潤沢な知識を内包するものであるか,身をもって知っていたからかもしれない。ただ,その多くはほとんど知られることなく,ごくごくわずかな専門家のみの独占知識であるのも現実であった。これは,社会的な損失であると思えた。
 本書では,社会的援助組織の表面的な目的性・対象・方法だけでなく,実態に即したナマの特徴を少しでも知っていただくことを意図した。そして,同時にそれらの援助組織の間の繋がりについて,システム論からの提言を盛り込むため,あえて副題となった「メタ・アセスメント」という造語を用いた。援助組織の間で行われている「協働」は,本書の著者たちの多くとこれまでに実践してきたものであり,何気ないものから大々的な組織化を前提とするものまで,多様に存在した。しかし,いずれの「協働」であっても,それを実現するためには,「相手の立場を知った上で,相手にとって動きやすくなるような繋がりを作ること」が不可欠であると実感している。
 ある学会で,「協働」について示す際に,「クライエントを含めた他の専門性を含む『人』との繋がりを紡ぎ出すこと」と表現した。専門家といえども「人」の繋がりがもっとも重要であり,そこで生じた協働の一つが,本書の成立に関わるものであったと考える。いわば,編者が「他の専門性を持つ人との繋がり」を作ってきたからこそ,多数の著者の協働によって,本書が紡ぎ出されたのだと考える。28 名の著者には,日頃のご負担をおかけするにとどまらず,本書の編集に多大なご理解とご協力をいただいたことに心からお礼申し上げたい。
 ……(後略)

平成21年7月  編者 吉川 悟