はじめに

 マスメディアを中心に,子どもの引き起こす様々な話題が取上げられ,子どもの心の問題が脚光を浴びるようになってから10年以上経過している。児童青年精神医療の現場では,最近の受診者の増加に伴い,専門医療機関,専門医の不足が大きな課題となっている。厚生労働省もこの問題を重視して,平成17年度から3年間にわたって子どもの心の診療についての検討会を開いた。この中では,学会を中心とした専門性ある医師の養成,そのための学ぶべき内容の指針などが検討された。また専門性ある医療機関の充実のために,子どもの心の診療拠点モデル事業が,平成20年度より開始されている。
 子どもの心の問題を中心になって取上げてきたのは,日本児童青年精神医学会であった。学会設立当初より,多職種によるチーム治療を目指しており,医師,看護師,心理士,精神保健福祉士,教員をはじめ様々な職種の方が会員となっている。最近は会員の増加に伴い,総会における演題も増加しており,プログラムの作成に苦労している。2009年秋には創立50周年を迎え,京都で記念大会を開催する。
 学会でも以前から専門職種の養成に配慮しており,牛島前理事長の頃から毎年開く総会の中で教育講演を充実することを心掛けてきた。これは,教育講演に参加する方々への啓発普及だけでなく,「講師に中堅の方々をお願いして,最新の話題を中心に話していただこうという」趣旨であった。これらの講演内容は,各講師の力作であり,当日講演会場に参加できなかった方々にも役立つと考えられる。理事会の中で検討され,専門性ある医療スタッフの養成にも,児童青年精神医療の普及啓発にも有用と考えられる。執筆していただいた講師の方々には趣旨を説明して,加筆修正をお願いした。これらの労作が,「児童青年精神医学セミナー」として出版の運びとなった。学会の対象とする範囲の広さと並行して,幅広い分野についてオムニバス調に話題を取上げている。
……(後略)

 平成21年9月 日本児童青年精神医学会 理事長 市川宏伸