狩野力八郎著

方法としての治療構造論
精神分析的心理療法の実践

A5判 256頁 定価(本体3,800円+税) 2009年11月刊


ISBN978-4-7724-1117-2

 「治療構造論」とは,小此木啓吾が創始した精神分析的な了解と臨床における方法論のことである。著者は,その要諦を最も正当に継承し,臨床的成果として結実させた。本書は,治療構造論に基づいた精神分析的アプローチをパーソナリティ障害をはじめさまざまな疾患に応用させた著者の臨床研究を集大成したものである。精神分析における各学派の理論を俯瞰し,真に効果的な精神分析を実践する著者の臨床的知見が全編に亘ってちりばめられている。
 精神分析的アプローチは,人間の生きた心と心の直接的交流とそれについて徹底的に考えるという実践にその根本がある。著者はシステム家族論と精神分析理論は,一般に言われるほど違うものではなく,むしろ重要な概念において共通する,と述べる。
 特筆すべきは,パーソナリティ障害に有効な「A-Tスプリット」についての実践的な論文が収録されていることである。精神科医,臨床心理士の協働,治療的連携について,効果的なチームアプローチが具体的に提示され,精神分析的心理療法を学ぶための恰好の臨床書となっている。

おもな目次

    まえがき

第T部 精神分析と心的表象論

    生命現象と物語―心理療法とシステム論
    心的表象論
    心的表象としての自己の病理
    システム論的家族論および家族ライフサイクル論の流れ
    家族システムの病理から見た社会・文化的価値観の変化
    誰にとっての課題か?―青年期の課題と力動的システム論
    生きている連想と生きている関係―家族療法の中での心的プロセス
    システム家族論からみた家族と精神分析からみた家族―おもに三者関係をめぐって
    対象関係論と家族療法
    日本における「A-Tスプリット治療」の概観
    乳幼児と家族治療

第U部 治療手段としての精神分析

    精神療法における情動と言語化―精神分析の二重性
    精神分析における言葉の使用についての覚書
    プロセスノートの書き方―どんな目的で,いつ,なにを,どのように,書くか?
    パーソナリティ障害という病名の使用と知ること―精神科外来マネージメント技法のひとつとして
    内的ストレッサーとストレス―精神分析からの再検討
    相互適応システムの脆弱性―心理発達からみたストレス脆弱性について
    自殺の危険のある患者に対する精神療法―重症パーソナリティ障害に関して
    多職種のチーム活動における集団力動
    コンサルテーション・リエゾン活動―臨床と研究の乖離と統合
    家族療法研修と精神科卒後研修教育

    あとがきに代えて