パウル・エンメルカンプ,エレン・ヴェーデル著/小林桜児,松本俊彦訳

アルコール・薬物依存臨床ガイド
エビデンスにもとづく理論と治療

A5判 330頁 定価(本体4,800円+税) 2010年2月刊 


ISBN978-4-7724-1119-6

 アルコール・薬物依存の問題は,しばしば社会問題として巷間の耳目を集めるが,その治療という観点は,強調された事件性の背後に隠されてしまう。また,治療に携わる専門家の多くも,これまで欧米で開発されてきたエビデンスに基づく治療法を積極的に導入してこなかった。
 本書では,物質依存についての専門的な治療理論とその応用例の記述に多くのスペースを割いており,中核的な依存症患者を治療へといかに動機づけ,治療につなぎとめていくか,という具体的かつ臨床研究の裏付けを持った方法論が数多く提示されている。アルコール・薬物依存の臨床では必発と言ってよい多剤乱用の問題や,うつ病など他の精神障害の併存についても詳しく触れており,症例を提示して具体的な治療過程を描写することで,エビデンスにこだわるとしばしば陥りやすい無味乾燥さを読み手に感じさせない構成になっている。
 物質依存に関わる臨床家・研究者はもちろんのこと,依存症の当事者とその家族,また,周辺で支える一般の人々にも大いに参考になる一書である。

おもな目次

日本版へのまえがき
第1章:物質乱用と依存の臨床的特長

    物質依存と依存性物質
    物質依存の疫学
    物質依存は他にどのような精神障害を合併するのか
    物質依存はどのようにして発症するのか
    物質依存はどのような経過をたどるのか
    物質依存は他にどのような問題をひきおこすのか
    物質依存の診断

第2章 物質依存にどう介入するか

    動機づけ面接
    対処スキルトレーニング
    暴露療法
    随伴性マネージメントとコミュニティー強化法
    行動的カップルセラピー
    12ステップ
    薬物療法

第3章 臨床研究にもとづく治療法の選択

    動機づけ強化療法
    対処スキルトレーニング
    渇望誘発刺激による曝露療法
    随伴性マネージメントとコミュニティー強化法
    行動的カップルセラピー
    12ステップ・アプローチ
    節酒と断酒
    薬物療法
    最適な治療法の選択

第4章 症例提示

    解毒
    臨床的な評価方法と治療計画の立案
    使用欲求について患者にどのように説明するか?
    症例ピーター
    症例ジャン
    マクロ分析
    症例ダイアン
    症例ガドラン

第5章 複雑化の要因

    対人暴力
    他の複雑化の要因

第6章:維持療法とフォローアップ戦略

    再発(Relapse)
    維持療法
    ハームリダクション

付録
文献
訳者あとがき
索引