マギー・シャウアー,フランク・ノイナー,トマス・エルバート/森 茂起監訳/明石加代,牧田 潔,森 年恵訳

ナラティヴ・エクスポージャー・セラピー
人生史を語るトラウマ治療

A5判 176頁 定価(本体2,800円+税) 2010年03月刊


ISBN978-4-7724-1125-7

 本書は,ナラティブ・エクスポージャー・セラピー(NET)を紹介するはじめての実践マニュアルである。NETは,トラウマ性ストレスとPTSDに有効な新しい短期療法であり,戦争や紛争を経験した地域の要請にこたえて開発された。長期にわたって多数のトラウマ的出来事を経験しながらも継続的介入を受けることが困難なサバイバーに,効果的な治療を提供するものである。子どもにも有効な技法であり,子ども版は「KIDNET」と呼ばれる。
 NETは,ヨーロッパを中心に,トラウマ性ストレスへの強力な治療法として認められている。戦争や紛争に関わる実践のみならず,一般の臨床現場においても,生活史上に多数のトラウマ的出来事を持つサバイバーの治療に用いられている。コソボ,スリランカ,ウガンダ,ソマリランドなどの紛争後社会の現場で効果が確かめられ,ウガンダとドイツでの厳密な臨床試験を経て有効性が確立されている。今までの実践から,一定程度の症状低減がもたらされるために,最低3〜6回の治療セッションを要することが分かっている。比較的短期で治療効果が期待できるために,日本でも,虐待やトラウマ的喪失体験を経験した子どもや,同様の体験を生活史に持つ成人などを対象として,幅広い臨床現場への適用を期待できる。

おもな目次

序章 被害者の声

第2章 理論的背景

    1節 外傷性ストレス
      1.外傷的出来事
      2.ストレスとアロスタシス的負荷
      3.組織的暴力
      4.PTSDの概念
      5.成人および子どもの心理社会的問題と併存障害
      6.複雑性PTSD
      要約 外傷とは何か/組織的暴力とは何か/DSM−WのPTSD診断基準/外傷を受けた人はどのように感じるか/複雑性PTSD
    第2節 PTSDと記憶
      1.外傷性記憶の性質
      2.感覚−知覚的表象
      3.文脈的な自伝的記憶
      4.記憶の神経生物学的基礎とPTSD
      要約 PTSDと記憶/PTSDと脳
    3節 感情体験の処理
      1.正常な情動処理
      2.治療への示唆
      3.外傷を語れないこと―社会政治的意味
      要約 恐怖構造の情動処理/PTSD治療
    4節 NET―理論モデル
      1.NETの原理
      2.NETの要素
      要約 NETの基本原則/NETの要素

第3章 NETの治療法

    1節 NETの基本
      要約 NETの基本要素
    2節 NETの各段階
      1.面接の構成
      2.初回面接
      3.2回目の面接
      4.継続面接
      5.最終面接
      6.治療後の診断面接
      7.KIDNET―子どものNET
      要約 NET手続きのもっとも重要なルール/子どもとPTSD
    3節 治療過程で遭遇する難局―NETを深める
      1.回避しようとする患者
      2.意識が遠くなる患者―解離とフラッシュバック
      3.情報を出し控える患者
      4.気がかりや苦痛を訴える患者
      5.馴化が起こらないようにみえる
      6.治療者の回避
      7.記憶と現実
      8.治療者−患者関係―NETの規則と一般倫理
      要約 要約/治療者のための自己内省
    4節 NETの限界
      1.一般的限界
      2.動機づけの不足
      3.薬の処方と薬物
      4.罪悪感

補遺

    補遺A 説明と同意の書式
    補遺B アブドゥール・カディールの人生体験の物語
    補遺C vivoとは何者か

解説
文献
索引