はじめに

 少子化の現状を背景にした,離婚に伴う子どもの奪い合い,高齢社会における老親の虐待や扶養をめぐる争い,遺産相続争いなどは,すでに社会問題となって久しい児童虐待やドメスティック・バイオレンス(DV)と共に,今後,家族臨床の主要なテーマになると思われる。このような,子どもと家族に関する問題や紛争は,いずれも「法」と「臨床」に密接にかかわることが特徴である。
 家族の問題や紛争は,離婚やDVが夫婦関係,虐待や扶養問題が親子関係,遺産相続争いが親族関係という,それぞれの関係の歪みによって生じる。ただし,そうした家族関係の歪み自体が問題として提示されるのではなく,離婚であれば,子の親権者や養育費,財産分与の争い,DVや虐待では心身への加害行為,遺産相続ではまさに金銭や不動産の争いとして問題となる。このように,家族の問題は,関係の歪みのメタファーとして,子ども,金,物などを通して提示される。そうした家族の問題解決のためには,養育費,財産などの金や物の紛争に焦点化してアプローチすると同時に,その水面下にある関係の歪みにアプローチしなければならない。このことが,子どもと家族に関する問題に,「法」と「臨床」による関与が求められる理由である。

廣井亮一