黒川昭登著

「うつ」からの回復:新しい心理社会療法

A5判 240頁 定価(本体2,600円+税) 2010年5月刊


ISBN978-4-7724-1131-8

 「うつ」の人は普通の人よりも勤勉でまじめである。彼らは「性格」が明るくないとか「努力」が足らないと言って自分をきびしく責めるが,その一見まじめで好いとされる「自分にきびしい」「完全癖」などの特徴も「うつ」の原因のひとつである。
 こうした特徴は,生育歴や親の価値規範をそのまま取り入れて作られた「きびしいインナーペアレント」によって形作られている。だから 「うつ」を治すためには,自分にやさしくなることを目標に,この「きびしいインナーペアレント」を緩和することが重要である。
 しかし,これだけでは「うつ」は治らない。つまり「片付けができない」「業績が上がらない」などの「現実」が改善されなければ,結局,その「現実」が彼らを苦しめ続けるのである。
 われわれ専門家は心理的側面だけでなく社会的現実の改善も援助しなければ,「うつ」は治ったことにはならない,と著者は言う。
 心理と社会状況は不可分とする「心理社会療法Psycho-Social Therapy」の立場から,長年にわたる著者の経験にもとづき「うつ」の原因と治療法を追究。事例を中心に読みやすく,専門家はもちろん,当事者やその家族にもオススメの一冊である。

おもな目次

まえがき

第一章 「うつ」とはどのような病気か

    1 他の精神病とどう違うのか
    2 突然の死
    3 「自殺」と自己破壊衝動の深いかかわり
    4 自殺の予防
    5 朝,起床がつらい,仕事がしたくない
    6 「うつ」の人の睡眠障害
    7 「うつ」の人はどのような考え方をするか
    8 恐怖感と二つの考えの葛藤

第二章 「うつ」の原因は何か

    1 「うつ」と大脳生理学
    2 抗うつ剤は,万能か
    3 「うつ」のきっかけとしての「対象喪失object loss」

第三章 「うつ」の患者さんの生育暦

    1 コミュニケーションの視点から
    2 赤ちゃんは満一歳までは「胎児」である
    3 「うつ」の患者さんの幼少期

第四章 「うつ」を作らないための基本的な考え方

    1 あなたの家庭は「自由」か
    2 他人の感情に責任を持つな
    3 「頭のコトバ」と「体のコトバ」
    4 「うつ」の人が「しんどい」理由
    5 「自己一致Congruence」を目指して

第五章 「うつ」を治すための基本的な考え方

    1 「事実」と「感情」と「主体的条件」
    2 あなたはマインドリーダーではないか
    3 二重メッセージの病理
    4 「うつ」と呼吸法

第六章 「うつ」の人独特の心理と考え方

    1 「一日延ばし」の原因
    2 「一日延ばし」をどのように治すか
    3 楽しむと苦しむ
    4 華美な人や甘える人をねたむ
    5 無間地獄の苦しみ
    6 きびしい「インナーペアレント」をやさしく
    7 「インナーペアレント」の治療法

第七章 「うつ」の患者さんに安らぎを

    1 うつであるのに長時間働いている
    2 「怒りの仕事anger work」の方法と意味
    3 「固定観念」の解消はいかにむずかしいか
    4 「過労死」を例として
    5 「うつ」の治療法の一例・「言語化」
    6 「状況」の改善が「心」を許容する
    7 社会的効用と無条件絶対の愛

あとがき