はじめに

 表題にひかれて本書を手にする人は,自分か家族が「うつ」で悩んでいる人だと思う。
 そして,この本は,自分に役立つかどうか自分なりに判断して,買うかどうかを決めるのだと思う。
 私としては,「うつ」で悩んでいる人や家族に読んでほしい,と思っている。
 「うつ」の程度は人によってさまざまで,苦しくて,しんどくて,いっそのこと死んだらどれだけ楽になるだろうか,と思いつめているような重度の人もいるし,軽い人なら,医師や薬の助けを受けなければならないとは思っていない,ただ披れやすい程度という人もいる。
 しかし,健康な人のように毎日爽快に生き生きと暮らしているわけではなく,毎日,何となく苦痛だな,と思いながら過ごしている人もいる。そのような人の中には,家族や友人たちの中で,顔を合わせたくないとか,交際したくないと思う人がいないだろうか。
 そのような人は,たとえば,職場でも仕事の仕方が「きっちり」しているとか,小さな失敗も許してくれそうにないとか,自分に合わせてくれているように見えるが,相手が自分の希望を犠牲にしているとか,話をしていても絶えず気を使っているのがわかるので,こちらがしんどくなる。そんな人ではないか。そのような人は,何かにつけてきびしい人である。
 ところで,もしあなたがこのように感じているとすれば,実は,あなた自身が「つき合いにくい人」であり,「うつ」の傾向があると思って間違いない。
 だが,この程度の人は軽い人である。重い人の中には,当時をふり返って,「あのころは勤務先のビルの窓から下を見ることができなかったな」と思い出す人がいる。それは,衝動的に飛び降りるのでは,という不安感を持っていたことによる。
また,朝の通勤も怖かったことを思い出す人もいる。それは,駅に入って来る電車に飛び込むのではないか,と思うので,プラットフォームの端の方には立てなかったことによる。
 私は,しかし「うつ」の人は,まともな人だと思っている。そして,原因は,「素質」でも「性格」でもない,と思っている。
また,私が重視しているのは,「どうすれば治るか」ということであり,そのためには,生育歴や親の価値規範をそのまま取り入れて作られた「インナーぺアレント」を緩和する方法が重要である。
 私としては,患者さん自身に読んでほしいと思っているのであるが,治療のたずさわっているカウンセラーにも読んでいただいて,ここに書いてある通りの方法が役立つものかどうか,実地に検証してほしい,と思っている。

平成二一年九月九日黒川昭登