序文

 事の次第を説明しよう。本の構想はすでにあり、三章分の原稿はもう書き上げていた。ある晩、それに目を通した私は、こう思った。「何これ、めちゃくちゃじゃない。この章は臨床家向けみたいだし、この章は家族向けのようだし、もうひとつの章は教育者向けみたい。一体、私は何をしているのかしら」。そんな嫌な気分で眠りについたところ、午前三時にはっとして目が覚めた。「ひとつの声だ!」  しかし、ひとつの声とはどういう意味だろう? いま、その意味をじっくり考えるべきか、それともサラミサンドイッチでもつまむべきか。  私は考えるほうを選んだ。自分が感じていた哀しみにまで目を向けてみた。その哀しみは、さまざまな集団間、いや同じ集団内にも存在する、尽きせぬ意見の食い違いと関係していた。しかし、精神の病をもつ人の窮状を深く憂えている点は、みな同じである。そのとき、あることに気がついた。そういった異なる視点と要素は、どれもこれもみな重要なのである。精神の病をもつ人が何を考え、何を感じているか。家族は何を主張したいか。臨床家は何をし、どんな信念をもっているか。研究者はどんな事実を見いだしているか。教育者は何を教えているか。 この溝を埋めて、すべての立場に共通するひとつの声を見つけることが不可欠であるように思われた。本書は、そんな課題に対するささやかな挑戦である。  以上が、突然の目覚めの一部始終である。その後、私はサラミサンドを食べ、再び執筆に取りかかった。真夜中に起きた、奇妙な出来事だった。