フレドリック・N・ブッシュ,マリー・ラデン,セオドア・シャピロ著/牛島定信,平島奈津子監訳

うつ病の力動的精神療法

A5判 258頁 定価(本体3,800円+税) 2010年5月刊


ISBN978-4-7724-1136-3

 近年,うつ病臨床に際して病態の変化が急速に進んでいる。
単極性うつ病の背景にも躁病的なエピソードを見出す傾向が強まり,双曲U型障害に代表される双極性障害の概念が拡大されてきている。うつ病の自己愛的な防衛機制においては躁的要素や攻撃的要素が内向化し,自己評価の低下,自責の念,神経症的なこだわりといった心理的な介入が必要な状態が生じてくる。
 本書では,「うつ病に焦点を当てた力動的精神療法」を提案し,面接における実際のやりとりが豊富に紹介されているばかりでなく,自殺などの危機管理に対する力動的アプローチ,薬物療法や他の精神療法との併用などについても論述されており,うつ病臨床全体における力動的視点の意義についても理解を深めることができる。
 新しいタイプの病態をもつうつ病に対してエビデンスのある治療法を追求する本書は,精神分析に馴染みのない読者にも大きな期待をもって迎えられ,日常の臨床に役立つ知見を提供することだろう。

おもな目次

まえがき

第T部 イントロダクションと展望

    第1章 イントロダクション
      基礎的なトレーニング
      初期評価,力動的精神療法の適応を決めること
      治療期間
      うつ病に力動的精神療法を勧めること,またその場合の薬の併用について
      本書の流れ
    第2章 うつ病の力動的モデルの発展
      うつ病の力動的モデル
      うつ病に関する初期の精神分析モデル:失望,喪失,怒り
      後期のうつ病モデル:セルフエスティームの調整と攻撃性の問題
      愛着理論/うつ病の防衛機制
      うつ病患者からみた親
      うつ病の中心的な力動:まとめ
      うつ病の中心的な力動を定式化する
    第3章 うつ病の力動的精神療法の展望
      第1期:治療同盟と治療の枠組みの構築
      第2期:うつ病に対する脆弱性の治療
      第3期:終結

第U部 うつ病の力動的精神療法の技法

    第4章 うつ病の力動的精神療法を始めるにあたって
      治療的枠組みを構築する
      自由連想法と転移の概念を提示する
      探索過程を提示する
      治療同盟を構築する
      うつ病患者の治療的取り組みに対する障壁
      過度な羞恥心と暴露される恐怖
      圧倒的な意識された罪悪感とそれが悪化する恐怖
      うつ病についての思い込みの解決
      うつ病の中心的な力動を明らかにする
      治療初期における心理教育の役割
    第5章 治療中期
      中心的なテーマに取り組む
      治療中期で用いられる技法
      明確化
      直面化
      解釈
      転移解釈
      逆転移感情に取り組む
      夢の取り扱い
      治療中期の目標
    第6章 自己愛的な傷つきやすさに取り組む
      自己愛的な傷つきやすさの領域を認識する
      自己像の歪みと他者に対する認知の歪みを理解する
      自己愛的な傷つきやすさに対する逆効果の反応を理解する
    第7章 自己愛的な傷つきに対する反応性の怒りに取り組む
      怒りの自覚の欠如に取り組む
      怒りを伴う特有の幻想を明らかにする
      怒りに対する罪悪感を明らかにする
      処罰に対する予期を明らかにする
      競争と攻撃性との関連を探索する
      自己主張することがもっと心地よくなる
      自己へ向けられた怒りを理解する
    第8章 過酷な超自我と罪悪感
      患者が罪悪感と自己処罰について認識するのを援助する
      罪悪感に関する幻想を探索する
      性格に根ざした怒り,罪悪感,自己処罰を明らかにする
    第9章 理想化と脱価値化
      自己の理想化と脱価値化を明らかにする
      他者に対する理想化と脱価値化を明らかにする
      転移における理想化と脱価値化を探索する
    第10章 うつ病患者の防衛機制
      否認
      投影
      受身的攻撃性
      攻撃者との同一化
      反動形成
    第11章 終結期
      終結することを決める
      終結の過程
      時期尚早の終結の申し出を扱う
      終結期にみられる逆転移反応
      第V部 重要な論題
    第12章 治療の行き詰まりと陰性治療反応に対処する
      基本的信頼の障害
      より重篤な自己愛の過敏性をもつ患者
      重篤な心的外傷をもつ患者
      陰性治療反応
      増加する行動化を伴う治療状況に耐えることの困難
    第13章 自殺に対する力動的アプローチ
      復讐としての自殺
      病的な喪と再結合願望としての自殺
      他者を迫害者として体験した反応としての自殺
      自己処罰のための自殺あるいは他者を攻撃性から護るための自殺
      現実検討能力と自我統合機能の障害による自殺
      自殺患者に対する逆転移
    第14章 力動的精神療法と他の治療法の併用
      力動的精神療法と薬物療法
      力動的精神療法に薬物療法を併用するかどうかを決定する
      精神療法や薬物療法の介入を恥じる患者
      精神療法の補助としての薬物療法
      薬物療法の補助としての精神療法
      スプリット治療(役割分担):精神療法家と薬物療法医の治療をコーディネートすること
      力動的精神療法と他の精神療法の併用
      力動的精神療法に認知行動療法を併用する
      力動的精神療法に夫婦療法を併用する

文献

あとがき