障害編まえがき

 本書の成り立ちについての説明と基本的方向づけ,読み方・使い方は,2年前に出版された『技法編』と同じであるが,『障害編』だけを購入する読者のために,多少の変更を加えながら,あえて再び掲載することにした。
 (技法編3頁,まえがき部分本文1行目“精神分析は”〜22行目:“一言追加しておきたい。”まで)『障害編』に含まれる17講は,DSM-W障害分類を基に整理され,治療実践の中で結晶したそれぞれのテーマをめぐって論議されているが,その中で扱われていることは,テーマにうたわれていることだけでなく,患者の心のありさますべてを含んでいる。したがって精神分析的接近の本質をなす「治療関係の中で発見,検討,洞察を十分に行う」という作業は,どの章を読んでも,症例について,また自分自身の研修体験についても行われるに違いない。ただ,技法編と異なり,障害をもつ患者をどう助けるかが中心課題であるから,序講では,障害を同定し,精神分析的精神療法の適用のしかたを見立てる診断面接の実際と見本を提示した。さらに各講ごとに障害に特有だがDSM-Wに記載の少ない内的特徴,臨床上役立つと思われる情報を参考資料として付け加えた。臨床経験が未だ浅い読者は,まずこの資料を読み,そのあとで症例検討とエッセイを読む方がわかりやすいかもしれない。臨床経験の深い人にも障害理解の整理に役立つことを願っている。
 7〜8年前から,ケース・スーパーヴィジョンの中から精神分析的精神療法に最も基本的な事項を発見し,次回に理論的に討論,検討し統合する方式が現在まで行われている。読者の皆さんの本書を通じての研修体験がより統合されるように願っている。
15年近く営々と積み重ねてきたわれわれの研修内容を成書によってより広く分かち合いたいという希望が,参加者の間から起こったこともあり,今回の出版企画となり,本書は技法編に続く第二の出版である。
 このプログラム開始から軌道に乗るまで,一貫して支援して下さった松田孝治先生に感謝申し上げる。そしてプログラムに積極的に参加することを通じて,自分の属するチームと自分自身の成長を体験した参加者たちを高く評価する。ことに本書に収めた症例を提出して下さった方たちのお名前を下に記し(五十音順),本書の読者を含めたセミナー参加者全員とともに拍手を贈りたい。
岡田暁宣(2ケース),黒河内美鈴,黒田典子,澤田眞智子,多田美知子,戸田典子,中村真理子,長澤泉,樋口智嘉子(3ケース),藤田長太郎(2ケース),二橋茂樹(2ケース),長田道。
 ただし,症例報告の文章と内容については本書の目的に沿うよう,著者によって書き直されており,内容,文章についての責任は著者にある。
・・・・・・後略

2009年6月30日 高橋哲郎