あとがき

 本書は私がここ数年の間に書いた論文、エッセイ、書評を集めたものである。私にとって七冊目のそしておそらく最後の論文集である。今回も立石正信氏のお世話になった。校正刷りを読み返すと、なんだか回顧録的な話が多く、自分が年老いたことを改めて痛感する。ただ年老いた分だけ自由になったようで、私自身について今まで以上に多くを語っている。シゾイドが一面もっている『自己暴露的傾向」が露呈したのであろうか。読者には寛容の心を持って、楽しんで読んでいただければ幸いである。
 論文集に書評を入れるのは必ずしも常道ではないかもしれないが、私なりに力を入れて書いたものなので今回もあえて入れることにした。書評の対象になっている本はほとんどが私が好きな本、そこから多くを学んだ本であり著者を直接存じ上げている本もある。それもあって、本の内容を紹介し評するだけでなく、著者の顔を思い浮かべながら著者と対話するつもりで書いた。読者が書評に促されてその本を読んでくださればうれしく思うし、読まれて方には益するところが必ずあると思う。
 十数年間、当時金剛出版の一編集者であった立石正信氏が、私の一冊目の論文集の企画をたずさえて、名古屋まで私を訪ねてきてくださったときのことは今も覚えている。私の全く予期しないことであったので、また人づき合いの苦手な私が緊張もしていたので、対話は必ずしもなめらかとはいかなかった。のちに私の還暦の会にきてくださった立石氏が、そのおりのことを思い出して「話ははずみませんでした」と言われた。申しわけないことであった。しかしそれにもかかわらず、立石氏はその後も私の書くものに目配りされて、七冊も論文集を作ってくださった。心から感謝している。
 その立石氏は今では金剛出版の社長であり、私の方はまもなく臨床医としての仕事から退こうとしている。人のえにしと歳月の流れを感じざるをえない。

平成二十二年七月 成田善弘