反省堂書店

薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック
松本俊彦/著 小林桜児/著 今村扶美/著
金剛出版
2011年03月発行
販売価格:2,400円+税
★5つ

本書は,著者らが作った薬物依存治療プログラムの教材を,アルコール依存症にも対応できるように加筆した患者向けのワークブックである。本書がもたらした功績は2つある。まず第一に,管見の限り本邦初の患者向け薬物依存症治療プログラムを広く知らしめたことである。第二に,精神科医療現場で問題行動を呈することの多い薬物依存症の患者に対して,「更正」ではなく医学的な「治療」を提供していることである。それにしても本書で述べられている患者とは,評者の想像をはるかに超える人たちだと思う。C型肝炎とHIVのスクリーニングの項目で,「きれいな注射器を使わない,消毒しないで使うこと」「他の人と注射器を共有すること」「体液を他の性的パートナーから受けること」と,すごい項目が並んでいる。しかし著者らは,叱責や懲罰を加えたり,説教をしたりはしない。薬物依存やアルコール依存症を生涯うまくつきあっていかなくてはならない慢性疾患として捉え,患者に援助を惜しまない。また,本書は他のアルコール依存症の著書に見られるような,家庭内力動云々という議論が一切出てこないことも特筆すべきであろう。なお,このワークブックは我流ではなく,援助者であれば著者らのスーパーバイズを受けること,患者であれば相談・援助機関に連絡を取ることを求めている。