日本語版への序文

 私たちは,教師のためのインクルーシブ教育 ガイドブックシリーズの中の本書が日本で出版されることをうれしく思っています。
 障碍の有無にかかわらず,子ども同士が肯定的で互恵的に支え合う関係にあることは,インクルーシブな学校教育の中では最も重要なことです。本書では,障碍のある子どもとない子どもの間に有意義な友達関係や支え合う関係を育むために教職員がどのようなことができるのか,ということに焦点を当てています。ソーシャルスキルや仲間関係の教育上の重要性は,不当に低く評価されることが多く,あまつさえ無視されることさえあります。しかし,多くの人々にとって,ポジティブな人間関係を持つことがQOL(生活の質)の本質的な指標となります。加えて,友達から受け入れてもらえない子どもは学校が好きではないことも多く,学業成績も振るわないこと,また友達に好かれている子どもよりも情緒障碍になりやすい傾向があることが言われています(第1章参照)。障碍のある子どもたちにとっては,効果的なソーシャルスキルが身についていなかったり,人と触れ合う活動をする機会が限られていることも多いので,対人関係の影響はもっと大きいのです。
 本書は,サポーティブな友達関係を築くことについての重要な側面を扱っています。その中には,障碍のない子どもたちに対して,次のことを教えることも含まれています。つまり,障碍のある子どもたちとコミュニケーションをとること,サポートすること,権利擁護の代弁者となること,そして友達になることです。また,個々それぞれ能力が様々な子どもたちが一緒に学ぶ経験を共有するというピアチュータリングや協同学習のような仲間仲介指導法についても検証しています。その他の章では,どんな子どもも受け容れ,すべての子どもたちを対人面においても,学習面においてもインクル−ジョンできるように支援を拡げられるように,学校の環境を整えていくための準備についてガイダンスしています。
 また,ソーシャルサポート計画の立案,選択,実践プロセスについても説明しています。
 本書を通して,私たちは研究や素晴らしい実践を手短かにまとめました。また,インクルージョン教育を行っている学校現場で教師によって検証され検証済で,実践的な方略について述べています。私たちは,日本のみなさんにとって,障碍のある子どもたちの対人的なつながりや学力を伸ばすという大変重要な仕事をする際に,本書が役に立つことを願っています。

レイチェル・ジャネイ博士
Rachel Janney, Ph.D.
Blacksburg, Virginia, U.S.A.
マーサ・E・スネル博士
Martha E. Snell, Ph.D.
Charlottesville, Virginia, U.S.A.