Challenge the CBTシリーズの序


総監修 石垣琢麿,丹野義彦

 1980年代以降,認知行動療法の理論と実践は全世界に広がりました。わが国では,2010年に認知療法による気分障害の治療が保険点数化されたことからもわかるように,すぐれた先達のおかげで,この10年で急速に普及が進みました。わが国の認知行動療法の臨床研修システムはまだ十分とは言えませんが,臨床家・研究者は海外で学んだり,勉強会・研修会を継続的に開いたりして地道に経験を積み重ねてきました。今後ますます増えるであろう認知行動療法を学びたいという臨床家にとって,定番テキストとともにこれら先輩の経験は宝物のような存在であるはずです。
 「Challenge the CBT」シリーズの第一の目的は,臨床家の経験や実践方法をわかりやすく解説し,これから学び実践しようと考えている人の認知行動療法への敷居を低くすることです。単なる治療マニュアルや研究書ではなく,クライエントと治療者の喜びも苦労も含めて「日常臨床」の姿が浮かび上がるような著作が集められています。認知行動療法はマニュアルに従って実践するだけでは,当然のことながらうまくいきません。クライエントとの真剣勝負のなかで臨床家がこれまでどのような工夫をこらしてきたのかを知ることは,初学者だけでなく,自分の臨床を振り返りさらに深めたいと考える臨床家にも資するところ大だと考えます。このシリーズが多くの方々の役に立つことを願ってやみません。