あとがき

 本書の企画を洗足ストレスコーピング・サポートオフィスの伊藤絵美先生に相談したのは2009年の4月であった。その時,伊藤先生に言われたことは,今でも耳に残っている。

 「本を作るというのは,そのうち地獄を見るくらい大変なこともあります」

 私たちはあれから地獄を見たのであろうかと振り返ると,何度か「徹夜地獄」「力不足地獄」「無力地獄」などを見てきた気がする。しかしそれは,本を作るという要因だけではなく,2年間のなかでの環境や価値観の変化などとも連動していたと思われる。
 このように人生にある程度の苦労を生み出したテキストの企画ではあったが,私たちは苦労以上に得たものが大きく,地獄(?)を見つつも,基本的には非常に幸福な2年間であったと感じている。伊藤先生には全体を通してかなり詳細に指導をいただき,それにより私たちは認知行動療法の内容はもちろんのこと,認知行動療法の中核的な意義や目的,スタンスを,この本を作りながら学ぶことができたと思う。私たちはこのテキストを指導者に支えられて作らせてもらったが,作りながらこのテキストに,認知行動療法を施行する実践者として大きな影響を受けてきたと思っている。
 もうひとりの監修者の石垣琢麿先生には,認知行動療法の内容はもちろんのこと,出版における意義,企画の流れなどを丁寧にご指導いただいた。石垣先生の幅広いご指導からは,私たちは認知行動療法をテキスト化する意義,日本の心理臨床で認知行動療法の啓蒙活動をする意義などを深く学ぶ機会に恵まれたと思っている。この体験も,自分の今後の専門家としての生き方に大きく影響を与えてくれたと思っている。
 つまり,ときどき地獄は見つつも私たちは基本的には楽しく執筆に取り組み,多くの人々に支えられていることを実感しながら制作をすすめていった。言い換えればこの本の企画が進行していること自体が,人生における強靭なストレス対処であったようである。
 このように本書は,愛情を込めて育てた・育ててもらった本である。
 一つは世に出すことができたので,引き続き,トレーナーガイドブックも育て,同時にその制作を通して私たちが育ててもらうつもりである。
 今回の制作にあたり,名古屋女子大学学生相談室の荒木睦美先生,島田療育センターの須田聡美先生,芹香病院の山本裕美子先生に,執筆にあたり快くご協力いただき,毎回の章を確認・校正していただきました。ありがとうございます。また,毎日忙しいなかで,たくさんのイラストを描いていただきました井上創氏にも感謝申し上げます。さらに,広大な知識量から幅広いサポートを下さいました,あしたばメンタルクリニック院長の久保田裕先生にも,この場をお借りして感謝申し上げます。
 最後に,さまざまなワガママな要望を聞いていただき,根気よくお付き合いいただきました,金剛出版編集部の藤井裕二氏に,心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

2011年6月吉日
大島郁葉
安元万佑子