グレン・O・ギャバード,エヴァ・P・レスター著
北村婦美,北村隆人訳

精神分析における境界侵犯
臨床家が守るべき一線

A5判 292頁 定価(本体4,000円+税) 2011年11月刊


ISBN978-4-7724-1221-6

 臨床家が越えてはならない一線を越えること、それを「境界侵犯」という。本書は、精神分析における「境界侵犯」の倫理的問題について、多面的理解を試みた著作の翻訳である。
 精神分析では,従来より道徳性や倫理性の心理的性質とその起源を解明することについて,多くの学問的,臨床的努力が積み重ねられてきた。しかし,精神分析家の多くは,その道徳性の学問的解明に向けたような積極的な関心を,精神分析家自身の倫理的問題には向けてこなかった。つまり,精神分析家は「倫理の精神分析」には熱心に取り組んできたが,「精神分析の倫理」には十分には取り組んでこなかったのである。しかし、倫理をめぐるこの乖離は近年乗り越えられつつある。そして、この克服に重要な役割を果たした一冊が本書であり,この果たした意義ゆえに、境界侵犯に関する「スタンダード」との高い評価も受けた。
 この本の美点は,3つあげられる。まず,普段表に出ることのない境界侵犯の事例が,豊富に紹介されていること。2つ目に境界侵犯を起こす治療者を類型化し,それぞれの精神力動を示したこと。そして境界侵犯が生じた際に個人や組織がとるべき対応を,非常に具体的に論じていること,である。
 これらについての論述の包括性と具体性を備えた本書は,倫理的な問題が重視されつつある現代の臨床家にとって,欠かせない1冊になるであろう。精神分析的な治療者だけでなく,心理療法家や精神科医など人のこころに関わる臨床家に広く一読をおすすめしたい。

推薦のことば
はじめに
第1章 精神分析における境界概念
第2章 境界と精神分析過程
第3章 分析の仕組み,分析的境界,そして分析的対象
第4章 境界とジェンダー
第5章 精神分析における境界侵犯の初期の歴史
第6章 性的境界侵犯
第7章 非性的境界侵犯
第8章 転移の運命:終結後の境界
第9章 精神分析のスーパービジョンにおける境界
第10章 組織の対応
References
訳者あとがき
索引