原著者序文

はじめに

 『ヒルガード(とアトキンソン)の心理学』の第15版は,2002年に第14版が出版されて以来,本書にはいくつかの歓迎すべき発展がみられる。第一は,執筆陣が拡大され,はじめて北アメリカ以外から著者が加わり,斬新な国際的視点がもたらされている。スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタスからなる旧執筆陣に,ヴィレム・ワーグナー(ライデン大学)とクリステル・ルッツ(ユトレヒト大学)が加わることで,新たなヨーロッパの影響が取り入れられ,どこでも学べるような心理学専攻学生のための真にヨーロッパ用の入門書にもなっている。また,マーク・ライニッツ(ピュージェット・サウンド大学)も第15版の貴重な寄稿者として執筆陣に加わっている。

アプローチ

 1953年にはじめて出版された『ヒルガードの心理学』の内容,様式,やり方になじみのある人々にとって,本書の豊かな歴史の次の段階がこの新版である。大西洋を挟む両側で定評のあるヨーロッパの共著者が加わることは,同時に,教科書の国際的な範囲を広げる動きになる。私たちのねらいは,長年のアメリカの読者に対する人気を損なうことなく,北アメリカ以外の心理学書を使っている多くの教員や学生に『ヒルガード(とアトキンソン)の心理学』の適切さとわかりやすさを促進することにある。  これまでの旧版では,古典的であるが重要な研究を扱うと同時に,現代の最先端の研究の検討も行ってきた。心理学の基礎をなす古典的研究を理解し真価を認めることは学生にとって重要なことである。私たちは心理学分野や日常生活に及ぼす影響を際立たせるために古典的研究を扱い続けるし,また現代心理学ではおびただしい数の革新的研究がなされてきていることも承知している。第15版では,認知神経科学,ならびに脳と行動連関に関する研究の発展,感覚と知覚における基礎研究の創造的な応用,感情研究の「新しい波」,人格領域での知能理論,遺伝理論,進化理論,ならびに文化に与える社会心理学的な枠組みなど,心理学においてもっとも有望な新たな課題を扱っている。心理学の古くて最良のものと新しくて最良のものの組み合わせがじつに幅広く刺激的な全体を作り上げている。

何が新しいのか

 各章には入念に最新の情報が取り入れられている。北アメリカ,ヨーロッパ,ならびに他の国々における心理学の注目すべき動向がきめ細かく構成されるようにするため,各章とも,それぞれの専門家からの助力を得て慎重に改訂されている。  第14版のあと,最新の諸研究,ならびに各章の主題に直結する研究範囲を広げることを含めて,350以上の新しい文献が追加されている。心理学教育は常に発展しており,2009年に学部段階の学生が教えられていたように,この第15版が心理学入門書としての諸条件を確実に満たすために細心の注意が払われている。  特定の課題について対立する見解がある場合の特集記事,〈両面を見る〉は第15版にも引き継がれ,各章の終わりのほうで見ることができる。そのほとんどは現行の著者によって改訂されるか,最新の論争の的になっている問題についての新たな論争に差し替えられている。この第15版を通して自身の研究的枠組みを分かち合ってくれた幅広く高い評価を受けている国際的な寄稿者の方々に謝意を表します。  〈最先端の研究〉の特集記事もまた,新たな話題を含むように改訂されている。青年期におけるインターネット使用の心理学的影響,錯視の脳内過程の問題,ならびに現行の特集記事はここ最近の発展によって他の領域にどのような影響を及ぼしているか,といったものも最新のものに差し替えられている。  これまで旧版を支えてきた学生のためになる他のすべての学習上の特色は保たれ,そして第15版の新たな内容に合うように最新のものにされている。読者に学習内容を理解しやすくするために,各章の各節をかたまりに分けられるようにここまでの要約と評論問題で締めくくっている。そして各章の最後は各章の要約で終わり,ウェブリンク,ならびにPsyk.Trek3.0にリンクしているCD-ROMも最新のものにされて いる(付録の項を参照のこと)。