はじめに

 私たちの社会は犯罪への不安が蔓延し,少年犯罪者にも恐れを抱くようになってきています。マスコミでは少年犯罪の低年齢化や凶悪化がさかんに取り上げられ,各種統計調査で今後非行少年数が増加していくとの見通しが発表されています。
 それによって,少年犯罪の厳罰化を求める雰囲気がますます醸成され,応報的な司法処分が少年犯罪で荒れた社会において身を守る残された手段であると信じられるようになっています。科学的な根拠がないままそのような考え方が支持され,刑事政策としてとり上げられて非行少年を処遇する基本的な指針になってきています。
 本書「非行・犯罪少年のアセスメント:問題点と方法論」では,著者であるRobert D. HogeとD.A. Andrewsにより,控えめながら合理的できわめて説得力のある論調で,少年司法制度の効果的な運営のために標準化心理検査を活用すべき点について説明されています。既存の非行原因論や処遇等の実践の中で得られた知見が標準化検査に組み込まれているか明らかにしつつ,さまざまな心理テストがどのように司法制度運営を効率化させるかという点に焦点を当てています。司法機関関係者や専門家の間では理論的な背景が異なることが多いですが,相容れない考え方をしていたとしても,標準化検査で得られる情報は各関係者間で有効に用いられる点にも触れています。また,司法制度の目的が応報的であっても,再犯抑止に焦点が当てられていても,あるいは更生に向けた教育的介入が重視されていても,制度運営の効率化は客観的なデータに負うところが大きいと指摘されています。
 著者たちは,最近の少年司法領域の理論を分かりやすく解説し,新しい標準化心理検査法を紹介しています。少年司法や司法心理学等の領域にいる読者には,既存の概念を明らかにして整理するのに本書は役立つと思いますし,専門外の方々にも新しい情報を提供するという点で本書は役立つと思います。たとえ理論的なベースが異なっていても,少年司法制度の中で働いている方々には本書をお薦めします。犯罪学領域の社会科学は必ず社会の役に立ち,社会はそのような科学の力を求めていると考えます。

Seymour Halleck 編集長