後藤雅博著

家族心理教育から地域精神保健福祉まで

A5判 344頁 定価(本体4,200円+税) 2012年3月刊


ISBN978-4-7724-1246-9

 地域精神医療や急性期主体に治療が変わろうとする現在,医療者側の家族への対応もまた変わるべきであり,改めて疾患の予後によい影響力を与えうる家族の力と協力すること,つまり「治療の同伴者としての家族」を見いだすことが求められている。
 本書は,第T部・家族療法,第U部・家族心理教育,第V部・精神科リハビリテーション,第W部・地域精神保健福祉,第X部・災害とメンタルヘルス,の五つの部で構成されている。各分野においてはそれぞれ専門家が活躍し、ときには連携し合い日本における精神医療の世界を支えている。

 副題である「システム・家族・コミュニティを診る」について,著者は「序にかえて」で以下のように述べている。
 「1983年「日本家族研究・家族療法学会」が発足し,家族療法を学び始めてから,個人,家族,地域を見る視点としてのシステム論的認識法が有用であることを感じていて,今でも基本的にはものごとをシステムとしてみる見方はあまり変わってはいないと思う。ただ,現在では理論として現象を当てはめるのではなく,オルタナティヴな認識論のひとつとして必要な場合に複眼視的に使う,という点は最初の頃とはだいぶ違っているようではある。それに加えて,個人でも,家族でも,治療関係でも,地域精神保健システムでも,そこに「協働」という視点が強まっているとは思う。協働するためには,そのシステムとジョイニングし,リンクする必要があるわけで,どうも形式や題材,領域は違っても,「システムとしてみること・ジョイニングすること・協働すること」ということの必要性を繰り返して主張してきていたのではないか……。(「序にかえて」より一部抜粋)」

 著者は,外来診療では一介の精神科医として,ときには家族療法家として,またときには家族心理教育インストラクター,SST普及協会認定講師として研修やプログラムを実施し,地域精神保健の重要な領域である産業保健領域でメンタルヘルス産業医としての活動も行っている。
 日本における精神医療の世界に精通し,多種多彩な顔を持つ構造(個人の心と体,家族,治療構造,いろいろな機関など)の調整とネットワークの専門家,後藤雅博の全仕事がここに集結。

おもな目次

序にかえて

第T部 家族療法

    システム理論と医学―そのコンテキストとパンクチュエーション
    うつ病の夫婦家族療法
    システム,ストレス,コーピング―家族療法 私の見立て
    家族面接のポイント
    家族療法のヒント―希望に焦点を合わせて hope oriented

第U部 家族心理教育

    慢性統合失調症の家族への集団的心理教育
    効果的な家族教室のために
    対談:家族療法における心理教育を語る 伊藤順一郎×後藤雅博
    家族心理教育で必要とされる臨床家の姿勢
    日本における家族心理教育の現在

第V部 精神科リハビリテーション

    精神科リハビリテーションを巡る日本の現状:1998年
    障害構造論の社会的適用
    リカバリー,ノーマライゼーション,エンパワメント
    対談:統合失調症と病識 池淵恵美×後藤雅博?

第W部 地域精神保健福祉

    地域介入による自殺対策
    Ⅰ松之山町における実践―地域精神医療と家系図
    Ⅱ松代町における実践と全体の結果
    ひきこもりケースへの危機介入―緊急時対応の実際と原則
    生活の場づくりを通しての地域精神保健活動
    地域資源のアセスメント:戦力分析
    地域ぐるみの心理教育

第X部 災害とメンタルヘルス

    新潟県中越地震における災害時精神保健医療対策 福島昇,後藤雅博
    災害と家族支援―家族療法の視点から

あとがき