高橋規子,小森康永著

終末期と言葉
ナラティヴ/当事者

四六判 248頁 定価(本体3,000円+税) 2011年6月刊


ISBN978-4-7724-1256-8

 語られ,書かれた世界が人を規定する一方で,しかしそこで語り,書くことこそが世界を拓く。
 2011年11月,食道がんでこの世を去った気鋭の心理臨床家・高橋規子と,精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)小森康永のメール往復書簡を中心にまとめられた本書は,刻々進行するがんと「終末期」の時間を縦糸に,「当事者」が語ることの可能性を横糸に織り上げられた一つのナラティヴ実践である。
 セラピスト・高橋規子の支援から協同(コラボレーション)へのラディカルな転換は,本書に収められた遺稿「友人Dの研究」にひとまずの結実をみるが,しかし自らの「終末期」の構築を通してその先へと読者を誘う。「言葉の力」への信頼が駆動するナラティヴというプロジェクトにおいて,死にゆく人に/は何ができるのか。本書はその試みである。

はじめに
第Ⅰ部 われわれはどこから来たのか

    第1章 原家族原風景
    第2章 原家族再訪

第Ⅱ部 われわれは何者か

    第3章 著者たちの素顔
    第4章 コラボレイティヴ・アプローチは,いかにして実践しうるのか
    第5章 ナラティヴ・アプローチは,いかにして実践しうるのか?
    第6章 「友人Dの研究」とその後

第Ⅲ部 われわれはどこへ行くのか

    第7章 2011年7月
      7.11 女木島の帰りに
      7.14 夏はいいな
      7.19 ディグニティ
      7.26 乳がんのこと
    第8章 2011年8月
      8. 1 名付けのこと
      8. 5 アオザイの刺繍
      8.12 かのこやすらぎ会から
      8.17 危険思想
      8.19 ナラティヴ・メディシン
      8.22 読後連想
      8.22 アイデンティティと言説
      8.22 わたしもそうではないかと
      8.24 緩和ケア
      8.24 気管狭窄
      8.24 ステント
      8.24 主治医はだれ?
      8.31 暴挙
    第9章 2011年9月
      9. 2 紡ぐ
      9.12 どうやって終わらせるか
      9.14 友人Dの研究
      9.16 外在化=解明
      9.16 いけ好かない言説
      9.22 言葉は生の側にある
      9.22 緊急入院
      9.26 頸の痛み
      9.26 記述形式
      9.27 パラレル・チャート
      9.27 カラー
      9.28 得策
    第10章 2011年10月
      10.4 紡ぐへのリフレクション
      10.4 『……のために』を読んで
      10.6 患者vs.知人
      10.6 目の前の実践
      10.6 納得の言葉
      10.11 タイトルはあとで
      10.11 身内の集まり
      10.12 牽引
      10.14 秋田行き中止
      10.14 がんの痛み
      10.18 ホスピス入院
      10.18 症状緩和
      10.19 なにくれとなく
      10.20 絶対違う
      10.24 バロック
      10.24 現物支給
      10.24 謹呈
      10.31 呼称
      10.31 ホスピスっぽい亡くなり方
    第11章 2011年11月
      11. 2 お姫様願望
      11. 3 日頃の生活ぶり
      11. 9 私的か公的か
      11. 9 親がほぼ毎日やって来ます
      11.10 「顔」
      11.11 修正稿
    第X章 友人Dの研究

付録―書評

    マイケル・ホワイト/デイヴィッド・エプストン『物語としての家族』
    マイケル・ホワイト『セラピストの人生という物語』
    マイケル・ホワイト『ナラティヴ・プラクティスとエキゾチックな人生』
    小森康永『ナラティヴ実践再訪』
    マイケル・ホワイト『ナラティヴ実践地図』
    Marisa Silver“Night Train to Frankfurt, in “Alone With You””
    Michael White“Narrative Practice: continuing the conversations”
    Malinen, T., Cooper, SJ., Thomas, FK.(eds.)Masters of Narrative and Collaborative Therapies:The Voices of Andersen, Anderson, and White
    リタ・シャロン『ナラティブ・メディスン』
    Glenda Fredman“Death Talk: Conversations with children and families”

おわりに