はじめに

 本書は,認知行動療法の実践方法を体系的に,しかも具体的に分かりやすく解説した優れた臨床ガイドブックです。行動療法の基本的方法から,第3 世代のマインドフルネス認知療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーに至るさまざまな技法について,順を追って解説しており,初心者だけでなく,ベテランのセラピストにとっても,現代の認知行動療法を学ぶための最善のテキストとなっています。
 さらに,本書は,極めて実践的な指南書にもなっています。これまでの認知行動療法の解説書の多くは,特定の理論モデルと技法を説明することに終始していました。そのために現場の多様な問題に即して認知行動療法を柔軟に適用することができませんでした。それに対して本書は,精神障害や心理的問題の分類に合わせたケース・フォーミュレーションの作成の仕方が豊富な事例を含めて説明されているので,どのような問題には,どの技法を,どのように組み合わせて用いるのがよいのかを理解することができます。スーパーヴィジョンの方法まで解説してあり,認知行動療法を学ぶ者にとっても,また教えようとする者にとっても痒いところに手の届くテキストとなっています。
 認知行動療法は,発展経過において,広範囲の問題に対して,より有効に介入できるように技法を開発してきています。その起源である行動療法が創始された時代から数えるならば,認知行動療法にはすでに100 年近い歴史があり,しかも現在でも発展しつづけている方法です。第1 世代の行動療法,第2 世代の認知療法に基づく認知行動療法,そして第3 世代の文脈や機能を重視する認知行動療法というように,次々と新たなアイデアや技法が提案され,実践され,効果が認められ,幅広く活用されるようになっています。
 そのため,現代認知行動療法は,多様なモデルに基づく,多様な技法を備えたものになっており,学習者は戸惑うことも多くなっていました。本書は,そのような多様な方法を体系的に整理して,学ぶプロセスに沿って解説がなされているため,極めて利用者に優しいテキストとなっています。多くの方が本書を通して実践的に認知行動療法を学ぶことを期待しております。

2012年9月
訳者を代表して 下山晴彦