『認知行動療法臨床ガイド』

デヴィッド・ウエストブルック,ヘレン・ケナリー,ジョアン・カーク著/下山晴彦監訳
B5判/420p/定価(5,200円+税)/2012年10月刊

評者 林 潤一郎(成蹊大学)


 本書は,認知行動療法(以下,CBT)を体系的に解説した臨床ガイドブックである。世界的に用いられている教科書の一つであり,CBTの学習者にとっては待望の翻訳書といえる。
 本書は5部から構成されている。第1部では,CBTの基本的特徴が紹介されている。CBTの基本理論,発展の経緯,基本原則,他の療法と比較した形での特徴等を学ぶことができる。第2部では,CBTの基本的方法が概説される。CBT実施時に重視される「協働関係の構築」,問題を把握して見立てるための「アセスメントとケースフォーミュレーション」の利用と留意点,介入効果を検討するための「効果測定」,終結と再発防止のための留意点などを学ぶことができる。第3部では,CBTを臨床面接で用いるために必要な技術が紹介されている。クライエント本人の気づきや問題解決力を促すための「ソクラテス式問答法」,認知再構成に代表される「認知技法」,認知変容のために計画される「行動実験」,リラクセーション法に代表される「身体技法」,面接セッションの全体像を示した「介入の過程」などを学ぶことができる。第4部では,各障害や問題とそれらに有効視されている介入法について学ぶことができる。うつ病,不安障害,摂食障害,トラウマ,怒り,精神病,関係性の問題,物質乱用などについて,どのように問題を理解し,問題を変化させるために介入をすすめていくのかについて,具体的に学ぶことができる。第5部では,CBTの最新の発展と応用が紹介されている。グループやセルフヘルプなどのCBTの新たな提供方法,“第三世代のCBT”と呼ばれるCBTの新しい動向,CBT実践の評価についての議論,スーパービジョンとその利用法などを学ぶことができる。
 上記に示した概要からもわかる通り,本書の優れた点は,CBTの理論・研究・実践について,バランスよく学ぶことのできる点といえる。また,認知療法を軸としながらも,行動療法,“第3世代のCBT”についても紹介されており,CBTを構成するとされる3つの世代の知見を学習できる点である。さらに,実践スキルについては,CBT実施時に必要となる各技術について詳細に解説されるとともに,さまざまな心身の障害に対する認知行動モデルとそうした問題に対して有効と考えられる最新の介入技法群が具体的に紹介されている。そのため,タイトルの通り,CBTの臨床利用を志すものにとって有益な情報を多く含むガイドブックといえる。
 本書を手に取り,CBTの特徴として改めて感じることは,それぞれに問題を抱えるクライエントをできるだけ正確に理解し,少しでもクライエントが生きやすくなるように,もしくは,クライエントが望む方向に自身ですすんでいけるように援助しようとする姿勢である。そして,そのためにCBTの理論,研究,臨床技術が常に見直され,発展してきたという点である。本書は,こうしたCBTの特徴を実感しながら,現時点におけるさまざまな知見を学ぶことができる点で,CBTの学習者や臨床家はもちろん,CBTに馴染みのない臨床家にも是非ご一読いただきたい書籍といえる。

原書 Westbrook D, Kennerley H, Kirk J : An Introduction to Cognitive Behaviour Therapy : Skills and Applications. Second Eition.