何年か前,私は9.11攻撃から3年目の記念日を特集したテレビ番組を見ていました。ニュース専門チャンネルのCNNでは,あるメンタルヘルス分野の専門家にインタビューをしていて,9.11攻撃の直接的および間接的な被害者は,あの恐ろしい日に対する反応として今後どのように感じるのでしょうか,と尋ねていました。するとその専門家は「彼らはトラウマを克服することは決してないだろう」と答えたのです。
 私はこのコメントを聞き,自分の内側から強く湧き上がる怒りを感じました。その「専門家」は間違っています。30年以上もの間,トラウマとかかわる仕事をしてきた心理療法家としての臨床経験から,私にはそれがわかっているのです。そして,私はトラウマにかかわる専門的な文献にも詳しいのですが,その点からいっても彼は間違っていました。

 人はトラウマを克服する。人はトラウマを克服できる。

 このテレビ番組を見た瞬間に本書を書こうと思い立ったのです。怒りの後で,私は決意するに至ったのです。人はトラウマを克服することができるということや,さらにそうできるように援助することが可能な,多くの新しい革新的なアプローチがあるということを広めようと。

(「イントロダクション」より,一部抜粋)