本書は,Young Hee Choi 博士によるスキーマモード・ワークの解説本です。この本が出版されることになった経緯について,少しご紹介いたします。
 著者であるChoi 博士は,高麗大学(Korea University)医学部を卒業後,カリフォルニア大学のLiberman 教授のもとで学ばれました。現在は,ソウルにある Mettaa Institute of Cognitive Behavior Therapy & Schema Therapy の理事長や Seoul Paik Hospital, Inje University の精神科臨床教授をされています。
 韓国認知行動療法学会会長を務められ,アジア認知療法学会や国際スキーマ療法学会の設立メンバーとして,韓国およびアジアの認知行動療法の発展に多大な貢献をなされています。まさに,世界における認知行動療法,スキーマ療法を牽引しておられる第一人者です。そこで私たち日本行動療法学会第37 回大会・第35 回研修会準備委員会は,ぜひとも Choi 博士を日本にお招きし,日本行動療法学会の年次大会でスキーマモード・ワークに関するお話をしていただこうと企画しました。
 当時は,東日本大震災(2011 年3 月11 日)の発生とそれに伴う福島第一原子力発電所事故のため,海外からの渡航者は激減していました。そのような中で,Choi 博士は私たちの申し出を快くお引き受け下さり,博士による6 時間の研修会(Schema Mode Work:日本行動療法学会第35 回研修会/ 2011 年11 月26 日)と特別招待講演(Integrative Psychotherapy:日本行動療法学会第37 回大会/ 2011 年11 月27 日)が実現したのです。懇親会のスピーチで,傷ついた私たち日本人の心のうちを深く思いやって下さるあたたかい言葉をいただいたことが大変印象に残っています。
 研修会は,国際スキーマ療法学会のCertified Schema Therapist でもあるChoi 博士から,スキーマ療法を実践する際の最大のコツとなるスキーマモード・ワークを直接じっくりと学べる内容でした。また,特別招待講演では,Choi 博士が開発された Integrative Psychotherapy をご紹介いただきました。これは,認知行動療法,スキーマ療法,マインドフルネス・アプローチを包括した効果的・実践的な療法で,提唱者であるChoi 博士ご自身からの講演に会場は沸きました。
 大会・研修会は成功裡に終了し,その後,Choi 博士のお話をまとめて出版してはどうかという意見が持ち上がりました。最先端の治療技法に関する大変貴重な内容について,大会・研修会にご参加いただけなかった方々にも広く知っていただくことは,私たち準備委員会の務めではないかと考えたからです。本書の出版によって,我が国でもスキーマモード・ワークが広まり,一人でも多くの患者/クライエントの皆様のお役に立てることを心から願っています。

2012 年9 月
日本行動療法学会第37 回大会・第35 回研修会準備委員会