摂食障害について,より深く理解したいと思っている方,また,治療について,今一度,しっかりと考え直してみたい方は,ぜひ,本書を通読いただきたい。読み終わった時には,摂食障害の多様性も含め全体像が把握できたという印象をもたれるであろうし,治療については,「治療ガイドライン」にはない現場の血の通ったさまざまなアプローチを理解できるであろう。このような理解は,必ず,各自の治療の参考となるだろう。
 摂食障害という病態は,他の病態に比較して複合的な問題を秘めている。なにより,精神療法的なアプローチとともに,身体管理を含めた身体へのアプローチが必要となる。それも内科的にはもちろんのこと,婦人科的な問題も含まれる。そういう意味でも,本書のように,各科の摂食障害治療のエキスパートが,そろって身体管理も含めた自らのアプローチを論じていることはきわめて意味がある。
 また,摂食障害の精神療法は,長く論じられてきたわりには,いまだ,コンセンサスの得られたアプローチが見出されていない。特に,独特の「自己感覚のなさ」というか,「自分の気持ちや欲求を感じとる能力の低さ」のためか,精神療法過程で,手ごたえのあるやり取りに至らないことを痛感している方も多いであろう。編者も,他の病態として,対人恐怖症,身体醜形障害,不登校・ひきこもり,うつ病については,多くのケースとの経験から,ある程度の精神療法の方向性を示せたと考えているが(それぞれに単行本があるので,参考にしていただきたい),摂食障害の精神療法については,常に表面をカスっているような手ごたえのなさを感じていて,不全感に陥ることが多かった。そのため,家族療法的なアプローチを試みたり,身体感覚の活性化(ヨガやさまざまなエクササイズ)を試みたり,ひたすら支持的なかかわりを粘り強く試みたりと,右往左往してきたように思う。それぞれのアプローチで,少しは改善がみられる場合もあるが,中断することも多かった。編者自身の混乱を整理するためにも,本書はきわめて参考になった。
 また,摂食障害の病理については,「葛藤モデル」より「欠損モデル」として理解するという考えに出会って,なるほどと腑に落ちた時期もあったが,欠損とは何なのかを考えると本当のところはわからない。生育状況をみると,比較的,共通しているのが,本人が必要とする愛情やかかわりが欠けていた状況が見出される(不必要なかかわりや,本人の求めるものとはズレたかかわりや,本人には不快なかかわりは与えられていることが多いが)。子どもには,決定的に大切な時期(臨界期)があって,その期間に,必要な愛情や応答が欠けると,決定的な自己の核になる何物かが希薄になるのではないかとも考えているが,本当のところはわからない。ただ,治療的には,病理の本質を「成長不全モデル」とすることが妥当なように考えている。この考えに賛成な方は多いと思う。
 本書においても,複数の著者が,同様の考えを述べておられる。本書は,編者が会長を務めた,第26 回本青年期精神療法学会におけるシンポジウム「摂食障害の治療」の演者と,青山心理臨床教育センターの臨床講座およびワークショップの講師の方々を中心に執筆いただいた。とにかく,これほど摂食障害治療のそれぞれの領域における第一人者にそろって執筆いただけたことに深く感謝している。
 最後に,本書の作成中に,第11 章を担当いただいた中釜洋子先生が急逝されました。執筆者を代表して,謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

編 者