『摂食障害の最新治療−どのように理解しどのように治療すべきか

鍋田恭孝編著
A5判/224p/定価(本体3,200円+税)/2013年3月刊

評者 大森美湖(東京学芸大学保健管理センター)


 本書は,思春期疾患を新しい視点でとらえ続けてきた編者が,摂食障害(ED)治療における「ガイドラインにはない,生きた実践書を」と,まとめた書である。本文にあるように,ED は「複合的な疾患」であり,その治療の基本は,「心と身体の両面に平等に注意を向け,これらがどう繋がっているかを考える」ことや,「身体だけでなく,生育歴や家族関係,交友関係,課題達成度,人間関係等,患者の全体像についての理解をもつ」ことである。加えて,病態も多彩であり,治療契約の側面をみても「本来医療は,患者と治療者の『合意』と『協力』を前提として行われるものであるが,この『基本的な構造』が成り立たないのが特徴」という程,治療継続が困難になるような複雑さがある。よってED 治療に携わる者は,目の前の患者との対話はもちろんのこと,常に時代の変化や,心身両面の十分な理解とその最新の情報を取り入れていく必要があるだろう。
 本書の構成は,第T部―摂食障害治療の現状,第U部―各科の立場から,第V部―それぞれの心理療法的アプローチからの三部からなっている。第T部では,力動的診断の重要性や治療ガイダンスが紹介され,また編者がボディーイメージの観点からED と身体醜形障害の比較を行い,ED を新たな側面からとらえた内容が述べられている。第U部では,心療内科,精神科,内科,婦人科の第一人者が,それぞれの専門的アプローチを,多くの例示や図表を用いて紹介しており,第V部では,認知行動療法,対人関係療法,力動的精神療法,家族療法というED の代表的心理療法的アプローチが述べられている。本書の特徴は,これだけの生きた情報と多様な実践的アプローチが,1 冊に凝縮されているという点であろう。読み進めていくと,これまで表面的な理解に留まっていたさまざまなアプローチが,章ごとに深く掘り下げられていき,一方で治療領域の限界も自覚されるようになってくるのである。
 編者のいう「ED の精神療法は,独特の『自己感覚のなさ』というか,『自分の気持ちや欲求を感じ取る能力の低さ』のためか,精神療法過程で,手ごたえのあるやり取りにいたらなかった」や「常に表面をカスっているようであり,不全感に陥ることが多かった」という言葉は,多くの臨床家が共感するところであるが,本書は,編者自身が「そのような混乱を整理するためにも,きわめて役立った」と述べているように,間違いなく,臨床家の不全感を減らす一助となり,手ごたえを増してくれる内容に仕上がっている。精神科医,心療内科医のみならず,内科,婦人科を始めとする医師,心理療法士,看護師,ソーシャルワーカー,保健師など,ED 治療に携わる各領域の方々が,本書を臨床の傍らに携え,活用されることを期待したい。