有馬成紀著

境界性パーソナリティ障害と離人症
その病態と治療

A5判 240頁 定価(本体4,200円+税) 2013年10月刊


ISBN978-4-7724-1322-0

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は,精神科領域において最も困難な対象として,治療者を悩ませることで知られる。
 本書は,著者長年の経験をもとに,臨床現場からフィードバックしたBPD治療のコツを解説したものである。認知行動療法,物語論的アプローチ,問題解決療法,ロールプレイの技法など,最新の治療アプローチを詳述し,さらにBPDに多く見られる,自傷行為,摂食障害,大量服薬,性的乱交などへの対応についても述べている。さらに,治療者−患者関係の暴力や患者の怒りの扱い,転移−逆転移関係,治療抵抗性,など,治療プロセスに生ずるさまざまな問題にもふれている。
 後半部においては,BPDとの合併症として多く見られる離人症について,症状論,病型,家族背景,神経心理学的考察を展開し,行動療法,第三世代認知行動療法を中心とした治療アプローチを紹介する。
 精神医学・臨床心理学領域において,BPD患者との臨床に真剣に取り組んでいるすべての援助職の人々にとって有用な指針となるであろう。

おもな目次

はじめに

第Ⅰ部 境界性パーソナリティ障害

    第1章 境界性パーソナリティ障害について
      境界性パーソナリティ障害(BPD)とは
      認知神経心理学と脳画像など
      境界性パーソナリティ障害の病因論@
      幼児期被虐待をめぐって
      境界性パーソナリティ障害の病因論A
      心的状態をめぐって
      性差について
      自己とは何か
    第2章 境界性パーソナリティ障害の治療
      本書の治療の名前
      治療目標と目標設定
      治療目標の設定:ミラクル・クエスチョン
      限界設定
      頻回の夜間電話と自殺の脅しへの対応
      ルールの例外への対応
      境界設定の仕切り直し
      ヴァリデーションとノーマリゼーション
      帰属スタイルと統制の位置
      帰属スタイルの損得の治療場面
      規則と自由
      治療者の謝罪
    第3章 治療その2:メタ認知の強化
      Vygotaky,L.S.の近接発達の領域
      思考記録
      弁証法的統一:Linehan,1993
      コントロールすることと,コントロールをやめること
      積極的自己主張(アサーション)
      他人が自分を理解してくれないと言って怒る患者
      自律と依存の葛藤
      物語論的アプローチ
      問題解決療法
      ロール・プレイ,逆ロール・プレイ
    第4章 治療その3:個別的問題
      自傷行為・大量服薬・薬物乱用・性的乱交
      トラウマ
      幼児期性的外傷体験
      患者は母親の育児態度が自分の困難の原因と言い張る,外的帰属パターンから抜け出られない。自虐的でもある
      離人症
      居場所がない,空虚感
      質問癖の患者
      摂食障害
      広場恐怖とパニック
      強迫性障害(OCD)
    第5章 治療その4:治療過程での問題
      治療者への暴力への対応
      甘えの問題でスプリットした状況
      患者の怒りへの対処
      治療への抵抗
      治療セッションの時間を守らない患者
      転移・逆転移関係
      性的関係
      診断の問題
      受動攻撃性人格障害,否定性人格障害
      他の治療との併用
      薬物療法
      治療効果
      治療終結へ向けて

第Ⅱ部 離人症

    第6章 離人症について
      概念史
      症状
      病型
      健常人における離人の出現率
      他の精神疾患との関係
      離人症をおこす原因,きっかけ
      生育歴,家族背景
      生理心理学
      機能的脳画像
      神経心理学
      生化学,内分泌学
      離人症と文化
    第7章 離人症の治療
      Sookman,D.&Solyom,L.の治療=第一世代行動療法
      Nezirogluらの治療=第三世代行動療法
      Hunterらの治療=認知療法=第二世代行動療法
      離人症の原因と発症メカニズム
      補論1:セネストパチー(体感幻覚症)と離人
      補論2:解離と離人

あとがき