『「職場うつ」からの再生』

春日武彦,埜崎健治編著
四六判/272p/定価(2,600円+税)/2013年7月刊

評者 横山太範(さっぽろ駅前クリニック北海道リワークプラザ)


 職場関連のうつの治療としてリワークという営みが定着しつつあるが,リワークで重要視される自己を振り返る作業を,温かくもあるが厳しく求めた本書の内容は,春日武彦氏と埜崎健治氏による編著で,臨床家としてのお二人の経験と哲学に負うところが大きいと思われる。
 第1章,第2章は春日氏が,医師の立場から「現代型うつ病の実態」と「治りにくい「うつ」への医学的アプローチ」というテーマで執筆している。現状に関しては,さまざまな悩みに対して「精神科でSSRIでも処方してもらって解決しようとしたらそれはお門違い」であると明快だ。休職についても,「本人を「うつ病患者という人生」に閉じ込めて(あるいは安住させて)しまう」こともあると警鐘を鳴らす。治療に関しては「投薬のみによる力ずくの治療は馴染まない」と精神療法的な関わりの重要性を説く。
 第3章以下は埜崎氏が担当し,ご自分の経験に基づいてと思われるが,厳めしい名前の鬼塚相談員の視点を通じて患者とのやりとりが物語風に描かれる。面談で使う各種記録紙なども雛型が示されており,ありがたい。また,詳細な情報が必要なテーマについては別枠を設けていて読みやすい構成になっている。
 第3章「うつとリハビリテーション」では心の風邪と言われることが多いうつ病は,ゆっくり休んでも良くならない場合もあることや自覚的には重く苦しくつらいものであることから「心の骨折」と呼び,治療法としても服薬・休養だけでなくリハビリテーションと再発防止対策が必要になるとしている。リハビリテーションの目標も以前の状態に戻るだけではなく,「今までの自分の生き方を振り返り,うつ病になりにくい考え方や行動様式をあらたに身につけること」としている。
 第4章「うつのリハビリテーションの過程」では職場復帰までのプロセスが4段階に分けて描かれている。患者だけではなく援助者にとっても見通しを持てるようになることは重要である。安静期,家庭内寛解期(T,U,V),家庭外寛解期(T,U),職場適応期の各々の治療目標などが丁寧に書かれている。さらに職場復帰後3カ月の過ごし方も書かれており実践的である。
 第5章,6章,7章は「うつのリハビリテーションの実際1,2,3」となっており,復職を目指す休職者の支援よりもいっそう深刻な再就職支援を通じて,自分を知るためのワークや,なぜ働くのかと問い直すワークの重要性が語られる。また,疾病利得についてもしっかりと扱っている。苦労しながら再就職を目指す患者の物語が,再就職失敗→障害者雇用・障害者年金受給で終わっているのも現実の支援に真摯に取り組んできた埜崎氏であればこその結末か。
 コラムは11本で両編著者以外にも7名が執筆しており,全体としては若干まとまりに欠けるような印象もあるが,バラエティーに富んだ意見が興味深い。「おわりに」で春日氏が述べているような「長期戦」の心の支えとなり得る良書と思いお薦めしたい。