『マインドフルネス・ストレス低減法ワークブック』

ボブ・スタール,エリシャ・ゴールドステイン著/家接哲次訳
B5判/240p/定価(2,900円+税)/2013年9月刊

評者 高橋美保(東京大学教育学研究科)


 認知行動療法の第3の波の特徴の一つとされているマインドフルネスは,昨今精神療法や心理療法の世界で大きな注目を浴びており,すでにいくつかの概説書が世に送り出されている。しかし,マインドフルネスとは何かを本当の意味で理解することはとても難しい。というのも,マインドフルネスは理論的な学びだけではなく,体験的な学びが必要だからである。近年,マインドフルネス瞑想に関するCDや書籍はいくつか出版されつつあるが,特に,ジョン・カバットジンがマサチューセッツ大学医療センターで始めたマインドフルネス低減法のプログラムを現地で体験してみたいと思う臨床家や研究者は少なくないであろう。しかし,多くの人にとってそれは容易ではない。自宅に居ながらそのプログラムを受講できる本書は,このような体験的な学びを求める実践家や研究者のニーズに応える待望の1冊といえよう。
 本書は,1〜3章ではマインドフルネスの概説を行うとともに,マインドフルに食べる練習,3分間マインドフルチェックイン練習,5分間マインドフル呼吸法の練習を紹介している。4〜8章では歩行瞑想,ボディスキャン,ヨーガ,慈悲といった内容を組み込んでより深い瞑想を学ぶ。さらに,9〜10章は人間関係や健康な生活におけるマインドフルネスへと展開し,11章ではマインドフルネスの練習をライフスタイルとして組み込むための示唆を得ることができる。なお,各章にはフォーマル練習だけでなくインフォーマル練習も組み込まれており,マインドフルネスを日常生活で体験するための工夫が見られる。また,練習計画の立て方について具体的な示唆が得られる点も特徴的である。
 一般に,書籍を通したトレーニングは一方向な教示となるという限界がある。しかし,本書では「よくある質問」というコーナーで,読者の素朴な疑問に対する答えを絶妙なタイミングで得ることができる。また,著者自身の体験を含む個人的なエピソードが提示されていることにより,誰もがうまくいかない体験を持っていること,しかし,そこから気づきに至るプロセスがあることを共感的に理解することができる。さらに,一人で練習する限界を超えるための実際的な支援として,オンラインのコミュニティも紹介されている。
 なお,本書ではヴィクトール・フランクルの「刺激と対応の間には,“間”があります。その“間”には,対応を選ぶ力が存在しています。そして,その対応に自分の成長と自由がかかっています」という言葉が繰り返し登場する。本書は各章について最低1週間という時間を費やすことを推奨するとともに,体験を振り返るための記録スペースも十分に確保しており,これこそが本書が持つ時間的,空間的な“間”といえよう。忙しい実践家や研究者には何とも大変な作業と感じられるかもしれないが,この作業に取り組むことそのものがマインドフルネス体験であるということを身をもって知るひと時が過ごせるであろう。

原書 Stahl B, Goldstein E : A Mindfulness-Based Stress Reduction Workbook.