『解決志向ブリーフセラピーハンドブック−エビデンスに基づく研究と実践』

シンシア・フランクリン,テリー・S・トラッパー,ウォレス・J・ジンジャーリッチ,エリック・E・マクコラム著
長谷川啓三,生田倫子,日本ブリーフセラピー協会編訳
A5判/450p/定価(5,200円+税)/2013年9月刊

評者 磯貝希久子(ソリューションワークス)


 Evidence-based Practiceという副題どおり,本書はソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーの効果研究についてまとめられた記念すべき“始まり”の本である。これまで出版されてきた実践的なソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)の本の中にも必ず調査研究の章が含まれてはいたが,このように一冊にまとめられたものは初めてである。私自身は,面接回数や終結後のフォローアップはデータとして残していたが,終結していないケースにおいて,エビデンスのための質問(たとえば,各セッション終了時にクライエントに評価を尋ねるといった)をすることには拒否感を抱いていた。その行為じたいがクライエントに影響を与えることや,「誰のための面接か」ということが二の次にされているように感じたからである。しかし,本書のいくつかの章では「クライエントの人生に足跡を残すな」というインスーの教えに則り,“今目の前にいるクライエントにとって役立つ”臨床的な研究方法を教示してくれている。学ぶことの喜びを感じさせてくれるエキサイティングな本である。
 この本の魅力は,各章が,それぞれの分野での実践背景→調査方法→今後の研究課題→結論(まとめ)→さらなる学びのために→文献という構成になっており,とても分かりやすいこと,またSFAをトータルに知るにも,文献をたどり詳細に学ぶことにも活用できるというその幅広さにある。内容も,測定方法や研究レビューだけではなく,実践に基づいた研究報告が豊富に記載されている。子どもから大人,個人やカップル,学級・学校運営(WOWW),企業におけるマネジメント,「服薬についてのアドヒアランス向上」に寄与したという興味深い論文もある。これらは,SFAがそれだけの分野で実践され,経験が蓄積されているという証である。調査研究には関心がないという方は,第T部の「SFBTの起源と治療マニュアル」を読むだけでも充分に価値があるだろう。スティーブ・ディ・シェイザーとインスー・キム・バーグそしてBFTC創設時からの仲間たちが,どのように観察,研究してSFAが発展してきたのか,その貴重な歴史を知ることができる。
 課題としては,著者たちも述べているが,効果測定が,SFBTの基礎訓練を受けたばかりの大学院生によるものが多いこと。また,多くの章でN(サンプルサイズ)のことが議論され,Nに左右されない情報として効果量が示されていることは,読者の解釈を助けてはいるが,1研究のNの問題よりも質の高い研究の数を増やすことが最優先ではないだろうか。とは言え,本書が「経験的に知っている“質的なデータ”をいかにして定量的に示すか」の視点を提供し,質の高いエビデンス構築のための指針を示したことは,今後のSFA研究の発展への大きな一歩となったことは間違いない。
 編者の「あとがき」によると,原著を訳した後にページ数を半分に減らしているとのことなので,さらに学ぶための入口として本書を利用し,読者が関心をもった章は原著にあたるとよいだろう。半分にしてこのボリュームである。訳者や編者の方たちがどれだけ苦労されたかは想像に難くない。この本を日本語で読めることに,心からの感謝を伝えたい。

原書 Franklin C et al : Solution-Focused Brief Therapy : A Handbook of Evidence-Based Practice.