『ストレングスモデル[第3 版]−リカバリー志向の精神保健福祉サービス』

チャールズ・A・ラップ,リチャード・J・ゴスチャ著/田中英樹監訳
A5判/450p/定価(4,600円+税)/2014年1月刊

評者 伊勢田 堯(代々木病院)

 本書の初版は,江畑敬介監訳で1998年にチャールズ・A・ラップによる『精神障害者へのケースマネージメント』として,第2版は,リチャード・J・ゴスチャーを共著者に迎えて一層リカバリー志向が強化され,田中英樹監訳で2008年に『ストレングスモデル―精神障害者のためのケースマネジメント』として出版された。第3版はこれに続くものである。
 本書は,第1章:歴史,批判,有益な概念,第2章:ストレングスの基礎理論,第3章:ストレングスモデルの目的,原則,研究結果,第4章:関係とその結び方,第5章:ストレングスアセスメント,第6章:個別計画,第7章:資源の獲得,第8章:ストレングスモデルを支える背景,第9章:ストレングスモデルのエピローグ,付録から成っており,構成は第2版と変わりはない。
 内容面では,ストレングスモデルをケースマネジメントの枠組みからリカバリー志向に改変されて,第3版のサブタイトルからケースマネジメントが削除された。
 第3版では,実践例が充実され,ストレングスモデルのツール,およびリカバリーとストレングスモデルの関係性について記述が充実された。また,スタッフの教育のための情報が充実され,海外でのストレングスモデルへの関心が高まったことから,イギリスや日本など海外からの情報も加えられた。日本からは監訳者の田中英樹の自験例が紹介されている。
 さて,本書の最大のストレングスは,著者らが自負しているように「実践にすぐに役立つ」ことを重視した実践の書という点にある。精神障害をどう捉えて,どう支援することが有効なのかを分かりやすく解説する事例が豊富に紹介されている。
 ストレングスアセスメントでは,構造化されたインタビューからではなく,ワーカーが創造力を働かせて,クライエントのリカバリーの旅を促進する支援を哲学的に理解することを求めている。「楽器の弾き方を学ぶようなもの」で,クライエントのリカバリーの旅に興味をもてば習得は可能であると説いている。そして,このモデルを理解するための具体的事例がふんだんに紹介されており,評者も日頃の臨床経験からも腑に落ち,しばしば目を開かれる記述に出会い,創造力をかきたてられる。読んでいて楽しい。
 その一方で,実践書であるという長所の裏返しではあるが,豊富な経験に相応しい理論化に十分成功していないように見える。そのひとつの例として,個人のストレングスを,願望(aspirations)×能力(competencies)×自信(confidence)で評価しているところは物足りない。また,ストレングスアセスメントの手法として,クライエントとの会話とブレインストーミングに委ねられている点も今後の発展に期待したいところである。
 本書は,地域ケアを推進するに当って,当事者・家族はもちろんのこと,すべての精神医療保健福祉の関係者にとって必読書のひとつである。第2版を読了された方にも,ストレングスモデルへの理解をさらに深め臨床経験を豊かにするだろうことは請け合いである。

原書 Charles A Rapp, Richard J Goscha : The Strengths Model Case Management with People with Psychiatric Disabilities Second Edition