『ストレス軽減ワークブック−認知行動療法理論に基づくストレス緩和自習書』

ジョナサン・S・アブラモウィッツ著/高橋祥友監訳
B5判/330p/定価(3,600円+税)/2014年1月刊

評者 山田裕子(北里大学健康管理センター)

 本書は,不安やストレス関連障害の専門家であるジョナサン・アブラモウィッツが,臨床家としての豊富な治療経験と研究者として積み重ねてきた知識を駆使し,より多くの人々のために効果的なストレスマネジメントの戦略をわかりやすくまとめた,ストレスマネジメントの自習書である。
 本書は3部構成になっている。第Ⅰ部(第1章から第4章)では,ストレスについて詳細に解説されており,読者は,個人特有のストレッサーやストレスの影響について学び,自分に必要な対処について理解を得ることができるだろう。第Ⅱ部(第5章から第10章)では,ストレス軽減に役立つことが実証されている技法として,問題解決技法,効果的なコミュニケーション,時間管理,認知療法,リラクセーション,瞑想,健康的なライフスタイルの保持,が紹介されている。読者が一人で技法を習得することは容易ではないが,本書では,事例を通してワークシートの使い方が具体的に示されており,読者はそれらを参考にしながら一つひとつ技法習得に取り組めるよう工夫されている。第Ⅲ部(第11章から第14章)では,一般的に人々がストレスを感じる3つの領域(職場,家庭,危機的状況)において,第Ⅱ部で学んだ技法をどのように応用するかが示されている。最終的に著者は,ストレスの少ないライフスタイルへと生き方自体を変えていくことを,読者に提言している。ストレスの少ないライフスタイルが身につけば,それは最強のストレスマネジメントといえよう。
 しかしながら,いざ自習書として取り組もうと思うと,本書はかなり厚く感じられる。読者の中には,本書を読み始める前からその厚さに圧倒され,「どうせ無理だ」「やり遂げられないだろう……」という思考が頭に浮かぶ方もいるかもしれない。そのような方は,どうか「極端に結論を急ぐ」ことなく,とりあえず「はじめに」だけでも目を通してみようという気持ちで,本書を手に取っていただきたい。少し読み進めてみると,本書が単にストレスマネジメントのさまざまな戦略を1冊にまとめたものではないことをご理解いただけるだろう。著者は,人々がストレスに圧倒される仕組みをよく心得ており,読者が本書を読み進める上でストレスを高めそうな要所要所に,それらを乗り越えられるよう手助けする言葉を施している。たとえば,「……,自分のストレス反応を管理するためにストレスに対する反応や認識をコントロールすることはできる……。ただし,自分の思考はコントロールできるからと言って,ストレスを引き起こす思考を抱いたのはあなたの責任であるという意味ではない。……だから,自分を責めてはならない。……」(p.51)と,著者は読者に語りかける。これは,いわゆる認知の歪みといわれるような「ストレス関連の思考パターン」について学ぶ時,人によって,“正しく”考えられない自分を責める傾向があることを熟知する臨床家ならではの言葉といえよう。この例にとどまらず,本書では,うまくいかない場合も想定した励ましに満ちた指示が随所に散りばめられており,読者は時にセラピストに伴走されているように感じるかもしれない。臨床家は,本書から,技法のみならず,患者やクライエントを支援する姿勢についても学ぶことができるだろう。ストレスに悩む人々のみならず,臨床家の方にぜひ手に取っていただき,今後の支援に活かしてほしい1 冊である。

原書 Abramowitz JS:The Stress Less Workbook: Simple Strategies to Relieve Pressure, Manage Commitments, and Minimize Conflicts