『子育ての問題をPBSで解決しよう!−ポジティブな行動支援で親も子どももハッピーライフ』

M・ハイネマン,K・チャイルズ,J・セルゲイ著/三田地真実監訳/神山 努,大久保賢一訳
B5判/230p/定価(2,800円+税)/2014年8月刊

評者 野中舞子(東京大学)

 本書は,Positive Behavior Support (PBS)の原理や実践を,専門家ではない養育者でも分かりやすいように,豊富な事例とワークを交えて概説している。PBSは,応用行動分析学に基づいた支援方法であるため,応用行動分析を学び始めたばかりの学生や専門家が,子育てというそのニーズが高い領域において,どのような実践が可能か知る上でも役に立つ著書だろう。
 本書は,4つの部で構成されている。第1部では,PBSの原理や基本的な考え方について概説している。どんな行動を親が問題だと捉えているのか,そしてその行動ははたして「問題」なのかを,具体的な定義を示しながら読者に問いかけている。また,行動は状況に依存すること,その行動の目的に注目する必要があることを説明することで,「子ども」とその問題となる「行動」を切り分けて,親が考えることができるように促している。第2部では,具体的な事例を交えて,ゴールの設定,情報の収集と分析,計画の作成,計画の実行,というPBSのプロセスについて取り上げている。PBSにおいて重要であり,かつ特徴的に思える点は,子どもに対して新しいスキルを教えることの重要性が唱えられていることである。子どもに新たなスキルを教える過程には,親子で共通の目標を設定するプロセスが含まれる。親が環境を調整することでその問題行動の頻度を減らすことを目指すだけではなく,子ども自身が「こうすることで家族の関係が良くなる」と自覚して取り組むことができる工夫が随所に施されている。そうした姿勢は第3部でより明確に読者に伝わるようになる。第3部では,3人の事例を取り上げて,具体的にどんな問題行動があり,それに対して家族がどのように取り組み,結果どう変化したのかを詳細に述べている。就学前,思春期,発達障害を持つ小学生の子どもについて取り上げているため,多くの親がどれかの事例には共感ができるように構成されている。特に,9章のケイタの事例では,学習障害を抱える子どもを,主な養育者が母親一人という資源が少ない状況で,どんな援助ができるのかを取り上げている。7章,8章と,両親で協力をして,丁寧に記録をつけながらPBSに取り組む事例を読んで,「これは自分にはできないかもしれない」と感じた養育者にとっては,自分にできる範囲の工夫をすればいいのだと思えて,励まされるだろう。また,こうした懸念に対しても筆者らは第4部を通して応えようとしている。自分の家族や生活の中でどのように取り組めばいいのか,そして第9章までを読んだ後にこころの中にもやもやと浮かぶ疑問をどのように解消すればいいのか,その答えを第4部で取り上げている。
 本書では一貫して,子どもの一見問題にしか見えない行動が,その子どもが手にしたいものを手に入れるためにとっている一生懸命の手段であること,親である自分が変化することが,子どもの変化には重要であること,けれど,そのプロセスはあくまで家族の中の資源に合わせて,その家族にあった形をとればいいことを伝えてくれる。子どもの年齢や障害のあるなしにかかわらず,幅広い養育者にとって役に立つ視点を提供してくれるだろう。

原書 Hieneman M, Childs K & Sergay J : Parenting with Positive Behavior Support : A practical guide to resolving your child’s difficult behavior.