『組織のストレスとコンサルテーション−対人援助サービスと職場の無意識』

アントン・オブホルツァー,ヴェガ・ザジェ・ロバーツ編/武井麻子監訳/榊惠子ほか訳
A5判/320p/定価(4,200円+税)/2014年3月刊

評者 宮城まり子(法政大学)

 本書はタビストッククリニック(Tavistock Clinic)における「組織コンサルテーションワークショップ」をもとに,組織ストレスの実例提示とその討論,理論化のプロセスを事例をあげまとめた書である。理論的基盤は対象関係論的精神分析理論,対象関係論的グループ理論,一般システム理論の3理論が柱である。
 初版は1994 年でやや古いが,本書は「感情労働」や「組織の人間関係とメンタルヘルス」の文献として多く引用されている。翻訳者は対人援助サービスに従事する看護職の方々で,現場経験を踏まえわかりやすく翻訳されている。本書成立の背景として,近年保健・福祉・教育などの分野にまで利潤や経営効率が導入され,職場の人間関係や職場のメンタルへルスが悪化している状況に危機意識が抱かれたことがある。
 この状況は個人のみならず組織レベルにまで影響を与え,多様な葛藤や問題を生みだす要因となっている。その過程は組織内で無意識に形成されており,問題解決のためには組織の目的を明確化し,スタッフの感情体験を組織全体として捉えていかなければならない。すなわち組織全体を変革する視点がなければ十分な問題対策にはなりえないとしている。
 本書の構成を紹介する。目次を見ただけでも,対人援助サービスに携わる方々と組織にとって興味深い内容であることが一目瞭然であろう。本書は4部,21章から構成されている。第Ⅰ部は「理論的枠組み」―1章:組織生活における無意識の諸相,2章:グループとチームでの仕事における無意識:3章:職場という組織,4章:権限,権力,リーダーシップ。第Ⅱ部は「痛みとともにある人々との仕事」―5章:伝染の危機,6章:乳幼児特別ケアユニットにおける感情の問題に向き合う,7章:傷ついた子どもたちとの仕事における不安をコンテイン(抱え込む)すること,8章:死が私たちを分かつまで,9章:身体障害児学校の分裂と統合,第10章:死にゆく人々とともに働く:ほどよい人でいること,11章:天使も踏むを恐れるところ,12章:みずからに課した不可能なタスク。第Ⅲ部は「危機にある組織」―第13章:組織の混沌と個人のストレス,14章:やっかいな人と混乱した施設,第15章:不確かな未来に直面する,16章:声を発見する,17章:助けを求める;スタッフサポートと感受性グループ再考。そして第Ⅳ部「より健康な組織へ」―18章:公共機関における社会的不安のマネジメント,19章:ケアとコントロールのバランスをとる,20章:対立と共同,21章:評価。
 これらの各章は主に2つのテーマからなる。@対人サービス専門職が援助関係のなかで不安・苦痛・混乱に直面しても燃え尽きずにいかに効果的に機能できるか,A組織構造,文化,作業様式など組織のあり方はスタッフの能力を保護する助けになるが妨げにもなる,という組織に関するテーマであり,総じて本書は「より健康な組織づくり」の参考になる文献である。

原書 Obholzer A, Roberts VZ:The Unconscious at Work:Individual and Organizational Stress in the Human Services