『モーズレイ摂食障害支援マニュアル-当事者と家族をささえるコラボレーション・ケア』

J・トレジャー,U・シュミット,P・マクドナルド著/中里道子,友竹正人訳
A5判/380p/定価(5,400円+税)/2014年5月刊

評者 初瀬記史(帝京大学医学部附属病院)

 本書は,英国のモーズレイ摂食障害ユニットで実際に使われている臨床マニュアルの邦訳で,実際に同ユニットに留学を行いトレジャー,シュミット両教授の元で臨床を学んだ訳者らによる「過食症サバイバル・キット―ひと口ずつ,少しずつよくなろう」「モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア」に続く第3 弾にあたる出版となります。本書の原題には「The new maudsley method」と副題がついていますが,家族を問題の一部として扱うのではなく問題解決に向けて専門家と協力しあうような立場に位置付けている事,摂食障害の維持因子としての家族プロセスを介入可能なものとして取り上げたより臨床的・実践的な方法である事が目新しい特徴であり,そしてモーズレイ摂食障害ユニットというハイレベルで密度の濃い臨床場面での実践研究に裏打ちされている事が何よりの魅力なのではないのかと感じました。
 その内容をみると,第1部では,臨床像や経過などの基礎的な情報,エビデンスやガイドライン,経験豊かな2名の母親からの視点,倫理的・法的な裏付けなどが紹介され導入に必要な知識が整理されています。第2部では,家族の適応についての調査・研究結果,摂食障害の維持因子として/そして介入可能な因子としての家族プロセス,非適応的な家族プロセス例について「5つの領域のアセスメントモデル」を用いた記述,変化を促進するための超理論モデル,動機付け面接,教育・認知の再構成・交流分析などの認知行動的アプローチなどが理論的土台として紹介されています。第3部では,外来における家族との疾患モデルの共有,作文課題,外来で行われる全6回のワークショップ,入院から外来に移行する際の3日間の集中プログラム,DVD・マニュアル・電話・Eメールでのコーチングを用いたワークショップ以外のスキルトレーニングなどのモーズレイ摂食障害ユニットで実際に行われている臨床的な取り組みが詳述されています。第4部で妊娠・出産・育児と親子関係などの特別なケース,第5部で家族介入に対する患者の声や専門家の声をとりあげ,そして付録資料として「家族のためのツールキット」「摂食障害症状インパクトスケール」「摂食障害アコモデーション・イネイブリング・スケール」が収められ,366頁に及ぶ重厚な内容となっています。
 本書は,摂食障害の専門治療にあたる臨床家がモーズレイ摂食障害ユニットでの理論と実践を取り入れるための参考書として有用なのはもちろんのこと,患者の近くでケアにあたる者と専門家に必要とされる知識やスキルにはあまり差がないと本書内の主張にあるように,実際に患者さんと接する家族や友人,保健医療関係者(医師,看護師,保健師,心理士,養護教諭など)にとっても有用な内容と思われます。

原書 Treasure J, Schmidt U, Macdonald P : The Clinician’s Guide to Collaborative Caring in Eating Disorders : The new maudsley method

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