『モーズレイ摂食障害支援マニュアル-当事者と家族をささえるコラボレーション・ケア』

J・トレジャー,U・シュミット,P・マクドナルド著/中里道子,友竹正人訳
A5判/380p/定価(5,400円+税)/2014年5月刊

評者 菊地裕絵(国立精神・神経医療研究センター)

 摂食障害の病理への家族の関与は,これまでに繰り返し議論されてきたことであろう。また,摂食障害患者の家族の負担にも注目が向けられるようになってきていると思われる。本書では,家族の対応が摂食障害の維持にどう関わるかということの考察や,摂食障害患者の家族自身のケアをどうするかという内容も自然と言及されていくが,主眼は,専門家である治療者が,非専門家として摂食障害患者をケアし支えていく家族や友人・パートナーといった人々と,どのように共同してケアしていくか(共同的ケア(collaborative care))という点にある。このような共同的ケアを実践している英国のモーズレイ摂食障害ユニットから出版されているテキストのひとつであり,第1弾『過食症サバイバル・キット―ひと口ずつ,少しずつよくなろう』(友竹正人・中里道子・吉岡美佐緒訳(2007)金剛出版/セルフヘルプマニュアル),第2弾『モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア』(友竹正人・中里道子・吉岡美佐緒訳(2008)新水社/摂食障害患者の家族ためのテキスト)に続き,本書が第3弾になる。
 本書の特徴は,第Ⅱ部の理論的な背景から第Ⅲ部の実践までバランスよく解説されている点であろう。理論については,特に,動機づけ面接や合理的行動理論・計画的行動理論,超理論モデル(トランスセオレティカルモデル,行動変容段階モデル)などの行動変容理論についても,その概説と摂食障害での適用が丁寧に解説されている。実践については,モーズレイ摂食障害ユニットで行われているワークショップやプログラムの内容が,ケース例を含めて,具体的に詳しく紹介されている。特に共同的ケアをこれから行おうとする人にとっては,表面的な技法をなぞるだけというありがちな失敗に陥ることなく,背景となる理論を理解し咀嚼したうえで実践していけるというのは大変重要なことであろう。
 本書は共同的ケアをいかにして行うかを述べたものであるが,対象となる読者は,共同的ケアを実践しようとする専門家のみにとどまらず,摂食障害に携わるさまざまな職種の医療従事者,さらには患者の家族や友人といった非専門家も含まれると,著者や翻訳者らは述べている。このような読者にとっては本書を読むことで摂食障害についての理解がより深まると思われる。
 平成26(2014)年度より,厚生労働省による摂食障害治療支援センター設置運営事業として,摂食障害患者だけでなくその家族も含めた支援や,治療者以外の支援に携わる人々と医療の連携の強化を含めた,我が国における摂食障害の治療・支援体制の整備が進められようとしている。このような折,摂食障害の治療・支援に携わるすべての人々に本書をお勧めしたいと思う。

原書 Treasure J, Schmidt U, Macdonald P : The Clinician’s Guide to Collaborative Caring in Eating Disorders : The new maudsley method