『看護のための認知行動療法』

白石裕子編
A5判/256p/定価(2,800円+税)/2014年8月刊

評者 木戸芳史(聖路加国際大学)

 本書は,日本において認知行動療法を先駆的に実践し続けている6 人の看護師が書き下ろした,「日本人による,日本人のための」そして「看護師による,看護師のための」認知行動療法の解説書です。「認知行動療法ですか?すっごく興味があるんですけど,何だか難しそうで……」「24時間シフト制の看護業務の中に,認知行動療法をどのように組み込んだら……」,この書評を書いている私も,そのように考えていた精神科看護師の一人ですが,本書はそんな悩める看護師たちの疑問に251 ページで応えることができる,まさに待望の一冊です。
 気になる内容ですが,まず編著者である白石裕子氏が看護における認知行動療法を概観しています。ここでは認知行動療法の歴史から我が国の現状,そして実践に必要な理論についてもわかりやすく丁寧に書かれているため,認知行動療法の初学者であっても,以降の章が読みやすいように工夫されています。それに続いて,うつ病クライアントへの認知行動療法については岡田佳詠氏が,幻聴への認知行動療法については則包和也氏が,退院調整チームによる認知行動療法については石川博康氏が,地域での認知行動療法については國方裕子氏が,重篤な統合失調症クライアントに対しての認知行動療法については北野進氏が,それぞれの活動しているフィールドでの実践を基本にして,実際に使用しているツールや具体的な運用方法について丁寧に説明されています。
 また,具体例も要所要所で効果的に用いられており,読者が実践をイメージしやすいように配慮されています。看護師による認知行動療法の実践に焦点を当てた書籍には,本書の著者らが翻訳した「看護実践のための認知行動療法」(Sharon & Arthur Freeman 著)が有名ですが,翻訳本であるために,文化や制度上の違いから実践例としては参考にしづらい部分がありました。本書は我が国における臨床場面を前提としており,本書はその課題に対する答えのような一冊ともいえるでしょう。
 現在の看護基礎教育の中では紹介程度になってしまっている認知行動療法ですが,今後は上級実践看護師(CNS)を中心に,技術の習得と積極的な活用が求められてくると思います。また,24時間365日あらゆる生活場面をクライアントと共有する看護師にとっては,認知行動療法の各要素や技法を学習することだけでも,クライアントの捉え方や日常のケアにも良い影響を及ぼすでしょう。
 精神疾患を抱えるクライアントを支援する専門的技術の一つとして,ぜひあなたの看護にも認知行動療法を取り入れてみませんか?