人類社会が発展していくためには,人が子孫を残し,文化を継承していくことが必要であろう。そして,その一つの重要な営みとして子育てがある。しかし,その子育てが現代では危機に曝されている。その背景には,親がさまざまな逆境に立たされることが多くなり,子育てそのものが従前のように円滑にいかない状況を生んでしまっているからである。さらに今後はそのような状況が加速化する心配もある。
 ただ,だからといって子育てがお手上げになるかというとそうではない。これまで受け継がれてきた子育ての本質は,これからもきっと変わらないであろう。そして,その一方では時代にあった子育てがどんどん生まれていくはずである。なぜなら,子育ては受け手である子どもに合ったものが自然であるし,そのときの状況に即した臨機応変で柔軟性のあるもののほうが望ましいからである。さらには,にっちもさっちもいかない状況に立たされたときに,とりあえず次の一手が打てるような子育て技術も当然あっていいはずである。
 このような逆境の際に手に取り参考にしたくなる子育て支援をまとめたのが本書である。不安と激動の時代のなかでの子育て,そして発達障害や虐待,非行,いじめ,自己破壊行動などさまざまな問題に直面したり巻き込まれ,逆境にある子育てをいかに支援していくか,それを“技術”として本書は提起している。もちろん,この技術がすべての子育て技術に通じるわけでも,逆境にいる万人に役立つものでもない。しかし,これらのことを一つのヒントにしながら,新たな技術を編み出していくことこそが,技術たらんとする所以ではなかろうか。
 子育てのあり方には,そこに不適切なところがなければ,正解などないはずである。技術を磨けば,そこには自然に肌のぬくもりが伝わっていくはずである。
 最後に,本書の編集を担当してくださった金剛出版の藤井裕二氏に心よりお礼を申し上げる。氏の企画のアイデアや心強い励ましと支援がなければ,本書は生まれなかったと思う。本当に感謝の気持ちで一杯である。

2014年7月 初夏を迎える京都にて 橋本和明