『セルフ・コンパッション−あるがままの自分を受け入れる』

クリスティーン・ネフ著/石村郁夫,樫村正美訳
A5判/296p/定価(3,800円+税)/2014年11月刊

評者 福山和女(ルーテル学院大学)

 コンパッション疲労という言葉が,看護の領域で,多く使われるようになり,評者はコンパッションについて少し文献を読み始めていたところであったので,「セルフ・コンパッション」というタイトルの本書に非常に興味を持った。
 社会福祉の領域での対人援助の専門職も多様であるが,以前は燃え尽き現象が取り上げられ,職場組織としての対応策が重要視された。しかし,現在では,専門職のスタッフの離職率の高さが著しくなり,このような「専門職への支援」が人材確保の対策としてあみだされるようになった。一方,雇用人口の現象から人材不足が深刻化し,対人援助のサービスを提供できないといった深刻な問題が浮上してきた。
 施設・機関としては,組織全体として,対人援助の専門職の擁護に取り組むために,OJT,プリセプター制度,組織へのスーパービジョン体制の導入に力を入れ,新人育成を促進することに必死に取り組みをしているところである。新人ばかりでなく,熟練のスタッフが職場を離れていく社会福祉の現場では,同僚や仲間同士で協力し合って支え合い,スタッフの孤立を防ぐ手段として,ピアスーパービジョンを導入しているところもある。集団で仕事をするユニット型の就労体系を採用している職場が多いが,業務遂行責任が組織単位ではなく,個人単位に任されていて,良い仕事をしてもそれほど評価されず,失敗をすると個人的に責めを負うことになるという実に厳しい労働環境となってきた。
 このような状況下では,コンパッション疲労が生じても不思議ではない。本書では,そのようなコンパッション疲労を招く以前に,セルフ・コンパッションの方法を習得する術について丁寧に論理的に解説がなされ,また,実践家への自己洞察,自己覚知,自己内省などを促す方法の解説が丁寧になされ,1章から12 章までの各章にエクササイズが1 〜 4 までが盛り込まれて編集されている。
 これらのエクササイズは,自己をありのまま受け入れるためのものであるが,生物・社会・心理的モデルの適用なのか,特に生物学的な5感覚をフルに活用している点が興味深い。たとえば,「すべてを感じる(p.117)」「体の中の複雑な感情に取り組む:和らげ,なだめ,許す(p.116)」「苦痛に対してマインドフルな方法で取り組む(p.98)」「瞬間を味わう(p.271)」「気持ちの良い散歩に出かける(p.244)」「性に関する恥ずかしさから解放される(p.231)」「セルフ・コンパッションのための休憩を取る(p.226)」「苦しみに慈愛を向ける(p.197)」「支援者のケアをする(p.189)」など。
 そのエクササイズの効果として次のような記述がある。「セルフ・コンパッションの訓練を受けた人は共感疲労を経験する頻度が低くなることが明らかとなった。これは,彼らが患者と関わる際に過度のストレスを感じたり,燃え尽きることを回避する技術を持っているからである。さらに,研究はセルフ・コンパッションが(中略)共感満足へと結びつくことを示唆している(p.188)」。

原著 Neff K : Self-compassion :Stop beating yourself up and leave insecurity behind