『いじめっ子・いじめられっ子の保護者支援マニュアル−教師とカウンセラーが保護者と取り組むいじめ問題』

ウォルター・ロバーツJr 著/伊藤亜矢子監訳/多々納誠子訳
A5判/224p/定価(2,600円+税)/2015年5月刊

評者 浦野由平(東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程)

 いじめは児童・青年の健康な発達にさまざまな悪影響を及ぼす,深刻な社会的問題である。これまで,いじめは主に学校の敷地内で発生することが想定されてきたが,近年は児童・青年におけるインターネット利用の普及を背景とし,ネットいじめが増加傾向にある。このように,近年いじめはその発生範囲を広げており,そのため,今後は教員やスクールカウンセラーだけではなく,周囲のすべての大人が注意を向け対応していくことが不可欠であろう。そのような意味で,「保護者」や「教師」という,子どもたちにとって最も身近な大人の「援助資源」としての可能性に焦点を当てた本書は,現状のニーズに即した内容となっている。
 著者は,まず第1章「すべての親にとっての悪夢」を通して,本書の目的が「教員と保護者が問題解決へ向けてパートナーとして協働するための具体的方法を示すこと」であると述べている。また,第2章「いじめとからかいが子ども・大人・コミュニティにもたらすもの」では,米国で実際に起きたいくつかのいじめ事件を取り上げ,それらが個人およびコミュニティに与えた深刻な影響について述べている。以降の第3章から第11章は,保護者と教員が協働する上での具体的なコツや工夫についての説明が続く。第3章「なぜ保護者は学校のいじめ対応に不満を言うのか?」から第7章「難しいタイプの保護者」までは,主に学校関係者に向けて保護者−学校関係者の協働関係を築く上でのコツを,保護者の立場やタイプ別に分けて説明されている。たとえば,第4章「いじめられた子どもの保護者との話し方」では自らの子どもがいじめられたことを知った保護者との面接の進め方が説明され,第5章「いじめた子どもの保護者との取り組み」では自らの子どもが誰かをいじめたことを知った保護者との面接の進め方が具体例とともに説明されている。本書は学校関係者を主な読者として想定していると考えられるが,第8章「家庭で子どもといじめについて話し合う保護者を支援する」から第10章「いじめの問題解決について保護者と教育者が期待してもいいこ
と(妥当な期待)」までは,子どもを持つ保護者にとっても,参考とできる内容となっている。
 「いじめ」という言葉の意味を知っている大人は多くいるが,その支援アプローチについて知っている大人はどれぐらいいるのだろうか。本書の内容は,臨床心理学的援助において重要とされる専門的なエッセンスを,学校関係者や保護者が実際に遭遇する場面での具体的行動に落とし込んだ対応マニュアルと考えることができる。本書の最後にある「監訳者解題」にもあるように,本書は専門家でなくともわかりやすい平易な言葉でつづられている。そのため,家庭と学校のバウンダリーを超え,子どもと関わるすべての大人が参考とできる実際的な対応の指針として本書は有効に働くのではないだろうか。ぜひ学校関係者のみならず保護者の方々にも本書を手に取っていただき,今後の子どもとの関わり方の参考としてほしい。

原書:Roberts WB Jr : Working with Parents of Bullies and Victims