『いじめっ子・いじめられっ子の保護者支援マニュアル−教師とカウンセラーが保護者と取り組むいじめ問題』

ウォルター・ロバーツJr 著/伊藤亜矢子監訳/多々納誠子訳
A5判/224p/定価(2,600円+税)/2015年5月刊

評者 大西彩子(甲南大学)

 いじめが実際に起きたときに,子どもたちにどのような支援を行うべきかという問題は,多くの学校関係者にとって難題である。著者のRoberts WB博士は,1978年から1993年まで教師やスクールカウンセラーとして教育現場に関わり,現在はミネソタ州立大学の教授としてカウンセラー教育を担当している。本書は学校関係者が保護者とともにいじめの加害,被害から子どもたちを守るための方法について書かれた,これまでにない具体的,実用的な「いじめの解決マニュアル」である。学校関係者と保護者の協働によるいじめの解決法が,著者の自らの経験に基づくアイデアや具体例とともに全11章にまとめられている。
 第1章,第2章では,いじめの復讐を目的とした学校銃乱射事件を例に,いかにいじめが子どもや周囲の大人,社会全体に不利益をもたらすのかを述べたうえで,本書の目的であるいじめの解決に向けて学校関係者と保護者が協同することがいかに重要であるかが述べられている。第3章では,我が子のいじめへの対応に不安を抱いている保護者に学校関係者が送るべき手紙の具体例が6つの原則とともに示されている。第4章,第5章では,子どもの教育に積極的に関与しようとする保護者,子どもの学校活動にあまり関与しない保護者,攻撃的な子どもの家族との協働関係の構築方法が,それぞれの面接例や留意点と合わせて説明されている。第6章,第7章では,いじめの解決に向けて協働しようとしても協力を拒む,沈黙するなど学校関係者が難しいと感じる保護者とwin-winの関係を築くための方法が具体例とともに説明されている。第8章,第9章では,修復的正義という考え方を基に,家庭で子どもと話し合いをする保護者を学校関係者が援助するための7つのポイントがわかりやすく説明されている。第10章,第11章では,本書のまとめとして,学校関係者が応じるべき保護者の6つの妥当な期待について述べたうえで,いじめという難しい問題に対応しようとする学校関係者に著者から応援のメッセージが書かれている。
 本書は,筆者の豊富な現場経験に基づくボトムアップ型で収集された具体的な対応方法やアドバイスが,学校関係者が明日からでも参考にできるような身近な言葉かけと合わせて提示されている。翻訳もとても自然で工夫されている。教師が保護者と信頼関係を構築するうえで重要なことは米国と日本で共通する部分が大きいと感じさせられるとともに,日本独自の問題(例えば学級全体を巻き込んだいじめへの対応やモンスターペアレントの問題など)についてはこの分野の研究の発展が強く望まれる。教育現場に立つ教員やスクール・カウンセラーすべてに手にとってほしい書であり,いじめの問題に困ったときには辞書代わりに開いてほしい一冊である。