マーク・カンザー,ジュール・グレン編/馬場謙一監訳/児玉憲典訳

「ねずみ男」の解読
フロイト症例を再考する

A5版 232頁 定価(本体3,400円+税) 2015年6月刊 


 
 

ISBN978-4-7724-1427-2

 フロイトが転移関係に対して十分な配慮をしていなかったこと,食事に招くなど私的で能動的な関わりを持って,分析的治療関係を逸脱したこと,等々の批判が展開されている。しかし転移の概念が未分化で,自我心理学の成立までなお十余年を残す当時にあって,本論文が強迫神経症患者の精神病理学,および精神分析的理解に寄与するところは甚だ大きかったと言わなければならない。(「監訳者あとがき」より)。
 本書は,『Freud and His Patients』の翻訳で,すでに刊行されている『フロイト症例の再検討―ドラとハンスの症例』,『シュレーバーと狼男―フロイト症例を再読する』(いずれも金剛出版刊)に続くもので,これにて原著の全訳が完成したことになる。
 症例ねずみ男を扱った第T部と,フロイト症例の全体(ドラ,ハンス,シュレーバー,狼男,ねずみ男)を総合的に論じた第U部から構成される本書は,第U部に補遺として症例の要約が併載されているので,第U部を読み,症例全体の予備知識と問題点を整理してから,第T部を読む方が,より理解に役立つだろう。症例はフロイトの理論と技法の分析的発想の歴史を教えるとともに,「フロイト症例」が稀有な芸術作品であり,科学的発見のこめられた人間精神の理解の記録であることを知らせてくれる。

おもな目次

第Ⅰ部 症例:ねずみ男

    第1章 ねずみ男の転移神経症(マーク・カンザー)
    第2章 強迫性の発達における自我機構 動作パターンの相互関係にもとづくねずみ男の研究(ジュディス・S・ケステンバーグ)
    第3章 再びねずみおよびねずみ男について(レオナード・シェンゴールド)
    第4章 ねずみ男の精神分析に関する考察と推測(スタンリー・S・ワイス)
    第5章 症例ねずみ男における誤同盟の次元(ロバート・J・ラングス)
    第6章 ねずみ男に対するフロイトの《人間的な影響力》(マーク・カンザー)
    第7章 統合的要約(マーク・カンザー)

第Ⅱ部 要約と全体の結論

    第8章 人間関係における新しい次元(マーク・カンザー)
    第9章 結  論(マーク・カンザー,ジュール・グレン
    第10章 フロイト症例の概要(ハーヴェイ・ビザァラー)

文  献
解説(及川卓)
監訳者あとがき