『認知行動療法を提供する−クライアントとともに歩む実践家のための ガイドブック』

伊藤絵美,石垣琢麿監修/大島郁葉,葉柴陽子,和田聡美,山本裕美子著
B5判/250p/定価(3,200円+税)/2015年8月刊

評者 杉山佳寿子(原田メンタルクリニック・東京認知行動療法研究所)

 Challenge the CBT シリーズに新たな一冊が加わった。本書は,2011年に出版された『認知行動療法を身につける―グループとセルフヘルプのためのCBTトレーニングブック』(以下,“トレーニングブック”とする)を,正しく上手に使うためのガイドブックである。トレーニングブックが認知行動療法(CBT)を身につけたいと思う当事者向けのワークブックであることに対し,本書はCBTを提供する側に向けた,専門家の味方となってくれる一冊である。
 本文は全12回のプログラムで構成されている。
 各回ごとに「必要なトレーナーのスキル」,「理論と技法の解説」,「トラブルシューティング」が記されており,回を重ねていく中で“アセスメント”,“認知の工夫”,“行動の工夫”のスキルが習得できるような順序立てとなっている。多数の具体例が掲載されていることから臨床場面を想像しやすく,ことトラブル例においては,「あるある」と思わず口にしてしまうようなよく直面する場面が選ばれていることから,ある種の親しみを感じるとともに勇気づけられ,その対処策にも具体例が多く提示されていることは,CBTを提供する側の助けとなってくれるだろう。さらに,より深く学びたい人に向けた書籍などの情報も豊富に紹介されており,自分の知識やスキルの不足に気づき,向上をはかる際の参考になるだろう。個人セッションとグループセッションを並列的に解説し,それぞれのシチュエーションに対応している点も本書の大きな特徴である。この点においても,さまざまな領域で柔軟な対応が求められる心理職の現状に合った実用的な本であるといえるだろう。
 また,CBTの誤解されやすい点を払拭しようとする姿勢は,トレーニングブックから本書にも引き継がれ,丁寧に説明がなされている。CBTはマニュアルを受動的に読む・ツールを渡し説明するだけで良いものではない。それぞれの出来事を眺め,背景を探り,見立て,認知・行動の工夫を練習していくことが大切である。そのことを心に留め,さまざまな反応などを含めマネジメントしていくことの重要性が,本書にも随所に盛り込まれているように感じた。
 このように,本書は誤解なくCBTを提供するために必要な情報が詰まった,贅沢な一冊である。専門家に自信を過不足なく持たせ,臨床場面を支えてくれるだろう。本書を通じてCBTを提供する側である専門家のCBTへの理解が一層深まり,共同作業を通してクライアントのセルフヘルプに役立つ一つのツールとなりえる,まさにCBTを実践するすべての人に有用な本であるといえる。