『ステップファミリーをいかに生き,育むか−うまくいくこと,いかないこと』

パトリシア・ペーパーナウ著/中村伸一,大西真美監訳/中村伸一,大西真美,吉川由香訳
A5判/356p/定価(4,200円+税)/2015年9月刊

評者 大瀧玲子(日本女子大学カウンセリングセンター)

 離婚や再婚を経験した親子は,家族の内から外から,家族の形について問われることとなる。離れて暮らす親や子,元パートナー,そして新たなメンバーとどのような関係を紡いでいくのか,その形は多様であってよいはずだが,実際には初婚家庭を元にイメージされた家族像や期待との狭間で葛藤することも多い。家族であれば交じり合い信頼し合い,一緒に時間を過ごすことが望ましいだろうという期待の中で,カップルは現実とのギャップに失望や焦燥感を抱え,子どもは不安や忠誠心を刺激される。本書は,そのような家族が「私たち」らしさを獲得し「家族になる」プロセスを支えると同時に,ステップファミリーが経験するさまざまな困難についての理解を促す啓発書でもある。
 第1部では,初婚家族との対比からステップファミリーに関する基礎知識が説明され,第2部からは,ステップファミリーが取り組む5つのチャレンジについて,ステップファミリーの第一人者である著者の広範な知識と臨床経験を元にした詳細な記述が続く。併せて,介入の枠組みとして3つのレベルが呈示され,家族の状況に応じてカップルセラピーや個人のトラウマ治療などが効果的に用いられることの重要性が述べられている。チャレンジの一つにはペアレンティング・スタイルの問題も取り上げられており,そのケーススタディは,単独親権をとる日本文化においても役立つ点が多いだろうと感じる。第3部ではLGBTやラテン系,アフリカ系アメリカ人,高齢のカップルなど,多様な文化規範や伝統,家族観を背景にチャレンジに取り組む家族の姿が描かれ,続く第4部ではステップファミリーのサイクルが,第5部では援助のアドバイスが豊富に解説されている。
 本書の特徴は,家族が課題に取り組む過程を丹念に追ったケーススタディがジェノグラムとともに多く紹介されている点である。血のつながらない家族が苦悩や葛藤を抱えながらも,チャレンジの過程で相手の感情や体験に気づき,尊重し,時に共有しながら,自分たちの家族の姿を模索していく様が,丁寧に,そして比喩を巧みに駆使した表現によって描かれており,援助実践と家族の変化が手に取るように分かる。それと同時に,違いを尊重しながら家族になるとはどういうことか,心の安全基地としての家庭とはどのようなものかと,改めて家族の在り方を考えさせられる。
 個々の家族が,独自の「私たち」らしさを追求するプロセスに寄り添う著者のまなざしは一貫して温かく,困難な課題に向き合う家族に対する敬意がにじみ出ている。そして,チャレンジの難しさを伝えると同時に,一対一の関係を積み重ねることによって家族は支えられ,安定した関係性へ進めることができるのだという「肯定的な未来図」を示しながら家族に寄り添う姿が印象的である。当事者やステップファミリーの援助者だけでなく,多くの臨床家に手に取ってほしい1冊である。

原書:Papernow PL : Surviving and Thriving in Stepfamily Relationships : What works and what doesn’t