『解決のための面接技法[第4版]−ソリューション・フォーカストアプローチの… 手引き』

ピーター・ディヤング,インスー・キム・バーグ著/桐田弘江,住谷祐子,玉真慎子訳
B5判/430p/定価(6,000円+税)/2016年2月刊

評者 伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス)

 本書はソリューション・フォーカスト・セラピー(以下,SFT)のテキストで,学習用のDVDが付いている。訳者あとがきによれば本テキストの原書の初版は1997年で,その後改訂を重ね,これは2012年発行の第4版である。このような経過を知るだけでも著者がこのテキストをいかに大事に考え,育て続けているかということがよくわかる。
 ところで評者はSFTではなく認知行動療法(CBT)を専門とする臨床家である。なぜこのような者に書評の依頼が来たのか訝しく思いながら,これだけの大著を無料でもらえることの欲に目がくらんで引き受けた。が,本書が届くなり激しく後悔する羽目になった。なにしろ377 ページの大著である。DVDまで付いている。これを読みこなしDVDを見終えるには莫大な時間がかかるに違いないと憂うつになったのだ。しかしいざ手にしてみると,後述するある1点を除けばまったく違和感なく,すらすらと読み切ってしまった。本書に書いてあるほとんどの技法やコミュニケーションスキルは評者にとって非常になじみがあり,かつ普段の臨床で使っていることと変わりないからである。思えばSFTとCBTの人間観や哲学には共通点が多くある。両者はクライアントを「主体性を持ったひとりの人間」として最大限に尊重し,能動的な対話を通じて,そしてクライアントの望む形でセラピーを展開するという基本原理においてはまったく変わらない。「クライアントの抵抗は協力の一形態である」というディ・シェイザーの考え方はCBTにもそのまま通じる。セラピストが戦略的に質問を使うことの効果についても両者は等しく自覚的である。
 この違和感のなさは,評者が1990年代にSFTを集中的に学んだこととも関係があると思う。評者はもしかしたらそうとは自覚せずに自身のCBTの実践にSFT的なものを取り込み,SFTに助けられているのかもしれない。そういうわけで思いのほか夢中で本書を読み,DVDの映像を見終えてしまった。そして本書がSFTのみならずCBTにおいてクライアントとの対話をスキルアップしたい人にとって非常に役に立つ教科書であることがよくわかったのである。
 最後に評者のSFTへの「違和感」について。それは「問題解決」についてである。SFTは戦略的に「問題」と「解決」を切り離し,「解決構築」を目論む。これが臨床現場で奏効することは評者も認めるし,戦略としての「解決志向」という見せ方は非常に面白いとも思う。しかし著者が医学モデルとして断じる「問題解決」「問題志向」は心理学で長らく研究され続けている極めて心理学的なテーマである。そして問題解決は,ひとしく「問題の理解」と「解決策の探索」から成り,前者が後者に先行する,というのが心理学における黄金の理論である。問題の理解は必ず解決に先立つ。筆者がCBTにおいてアセスメントを重要視するのもこの理論が背景にあることが大きい。これがSFT に対する筆者の異論であり違和感である。これに対してSFTはどのように反論するのだろうか。

原書:De Jong P, Berg IK : Interviewing for Solutions 4th Edition