『十代の自殺の危険―臨床のためのスクリーニング,評価,予防のガイド』

シェリル・A・キングほか編/高橋祥友監訳
四六判/250p/定価(2,800円+税)/2016年1月刊

評者 今井たよか(あるく相談室京都)

 青少年の自殺を防ぐためには,まず,どの青少年の自殺の危険が高いかを知らなければならない。本書は,青少年の自殺の危険をできる限り適切に認識・評価し,介入や治療につなげるためのガイドブックである。著者のキング博士とフォスター博士はミシガン大学で教える児童思春期専門の臨床心理士,ロガルスキー博士は児童精神科医とのことである。本書の成り立ちの詳細は記載されていないが,一読して著者たちがいかに熱意を持って青少年の自殺の危険に向き合ってきたかが伝わってくる。
 本書は7章から構成され,エビデンスに基づいた明確で系統的な方法を提示している。自殺の危険は,言うまでもなく生命の危険であり,場合によっては一刻を争う。その中で,落ち着いて適切な介入をするためには,何をどんな順序でどのように行うかがはっきりと構造化されているアプローチが役に立つ。
 読者として想定しているのは,精神保健の専門機関,救急やプライマリケアなどの医療機関,そして学校などで,直接青少年に接する臨床家である。
 第1章は総説で本書の構成や特徴が述べられる。ここで著者たちは,臨床家の抱きやすい,協力的で成長促進的な治療的アプローチを取ろうとすることと,患者の行動をコントロールして安全であろうとすることのジレンマを率直に取り上げ,「本書で解説する系統的な戦略は,臨床家の不安を和らげて,適切なケアを安心して実施することができるようになると,私たちは信じている」と述べている。自殺の危険に向き合う時,臨床家が緊張したり不安であったりすることは当然であり,だからこそ明確で系統的な戦略が必要だと筆者たちは力説する。
 第2章では,自殺の危険を認識し評価するための基礎知識として,危険因子と保護因子が紹介される。第3章から第5章がアプローチの実際であり,@スクリーニング,A評価と定式化,B介入計画とケアマネジメントの順で進められる。スクリーニングは面接によって行われ,補助として質問紙が使用される。スクリーニングで欠かせないのは自殺について率直に質問することであるが,質問が役立つためには青少年と共感に基づく良好な治療同盟を築く必要がある。また,評価においても重要な要素は「相手を思いやり,援助を差し伸べたいと伝える」ことであると述べている。質問や評価に先立って大切なことは傾聴に徹する態度であることも触れられている。介入としては,緊急時連絡カード,安全計画,入院機関の紹介など,具体的で活用しやすい方法が提案されている。また,青少年へのアプローチに欠かせない存在として,第6 章では親や学校との協力のあり方が述べられ,第7章では法律的な問題にふれられている。
 日本では15歳から39歳の死因の1位がずっと自殺である。1年間に400人以上の10代の青少年が自殺で亡くなっている。多くの臨床心理士,精神保健の専門家,教育の専門家が,本書を日本での青少年の自殺予防に生かされることを願う。