『新版 あとがき』

 ずいぶんと長いこと精神科医師として多くの患者さんたちの診療をおこなってきた。もうぼつぼつ半世紀になる。
 その長い精神科診療経験のなかで、医師になって8年くらい経ってから行動療法の勉強をはじめ、それをわたくしの主要な方法として臨床をおこなってきた。その経験もぼつぼつ40年になる。長いことであるからか、いまはこの方法はわたくしにとっては自然な方法であり、わざわざ取りだして考えるような方法ではなくなっている。自然にそのようにからだが動く、というところである。それに、他の精神療法とも違和感というか、そんな感覚がなくなっているように思うし、行動療法で考えるときと同じようなというか、その一部というか、そんなとり方をしているように思える。たぶん、わたくしには、他の精神療法の方法も、わたくしの行動療法の方法のなかに溶け込ませているところが少なくないのだと思う。なにしろ長い時間があったのだから。
 2007年に初版の『方法としての行動療法』を出版し、このたび、新しい論文を加え新訂増補として刊行できることはとても嬉しい。この本から、自分なりの治療法を見つけていただけたら、また嬉しい。

2015年11月 山上敏子