『犯罪被害を受けた子どものための支援ガイド―子どもと関わるすべての大人のために』

ピート・ウォリス著/野坂祐子,大岡由佳監訳
A5判/270p/定価(3,600円+税)/2016年2月刊

評者 藤野京子(早稲田大学文学学術院)

 本書は,Are You Okay? : A Practical Guide to Helping Young Victims of Crime の訳書である。犯罪被害を受けないことに越したことはない。とはいえ,受けてしまう現実がある。本書では,そのような事態に出会った8〜25歳の子どもに,大人が具体的にどのように対応するのが適当であるかを示す手引き書である。そのような事態で子どもは傷つくが,その後の対応次第ではその傷つきが軽減されることもある。しかし反対に,その事態での傷つきを一層深めてしまうこともある。そうならならいための望ましい大人の対応とは,本書第1章から第3章に挙げられたような子どもの変化に気づいて,本書のタイトル「だいじょうぶ?」などの言葉かけで,その子どものニーズに答えていく働きかけを提供することである。
 子どもに焦点を当てた理由として,一般人口における被害リスクが2倍であること,大人に比べて繰り返し被害にあいやすい傾向にあること,さらに大人に比べて自分を守ることが難しい一方で自分の体験を通報しないのが通常であること,などを挙げている。加えて,被害体験が加害行為の強い予測因子になっているとの研究を提示し,被害を受けた子どもが放って置かれたままだと,自分でなんとかしようとして危険な行動を取りやすくなり,そのことが潜在的に,少年犯罪の増加という結果につながる,ともしている。
 「人はだれでも,いつも安全だと感じる権利をもっている」「おそろしすぎるできごとだからといって話せないことはないし,あまりに些細なことだから言うほどではないと思う必要もない」という二つの真実を子どもが受け入れられるようにしていくことを支援の基本に据えている。また,英国オックスフォードシャー州若者加害サービスの修復的司法に関する上級実践家として子どもの被害と加害に日々接し,「被害者」と「加害者」に明確に分けられない現実を目の当たりにしている著者なので,誰もが「安心・安全」と感じられる社会をつくるには,その双方に排除ではなく支援が必要であると主張して,当事者同士の話し合いで解決の方向性を探る修復的アプローチにも言及している。
 本書で扱っている犯罪とは,事件化されるものに限定されていない。子どもから依頼してくること,してこないことを含めて,その子どものニーズをどのように取り上げるのが適当かが4章で具体的に記され,5章では子ども自身が話したがらなかったり口外することを拒んだりする際の対応などにも触れている。子どもへの支援は専門家に限定されない。子どもの身近にいて日々の生活を共にしている大人にできることが記されている。
 事例に加えて,“ ”内に示されたつぶやきが,当事者の内面を読者にイメージしやすくしてくれている。留意点や働きかけの例が「・」で,また実践のポイントが「◆」で示されており,大切な情報が目に飛び込んできやすい工夫もなされている良書である。

原書:Wallis P : Are You Okay? : A practical guide to helping young victims of crime